映画『孤狼の血』

【公開】 2018年(日本映画)
【原作】 柚月裕子 角川文庫
【監督】 白石和彌
【キャスト】
  ◆大上章吾(役所広司)
   ダーティーな噂も絶えない呉原東署のマル暴刑事。通称ガミさん。

  ◆日岡秀一(松坂桃李)
   県警本部から呉原東署の異動してきた若手刑事。大上と組む。

  ◆高木里佳子(真木よう子)
   クラブ梨子のママ。クラブ梨子は呉原の闇社会の社交場。

  ◆嵯峨大輔(滝藤賢一)
   広島県警本部監察官

  ◆一ノ瀬守孝(江口洋介)
   呉原に地盤を置く尾谷組の若頭。収監中の組長の代わりを務める。

  ◆加古村猛(島田久作)
   かつて呉原で尾谷組と抗争を起こした五十子会の下部組織の組長。

  ◆野崎康介(竹野内豊)
   加古村組若頭。再び尾谷組との構想に入る実行部隊を率いる。

  ◆五十子正平(石橋蓮司)
   広島市を本拠地に置く五十子会会長。

  ◆瀧井銀次(ピエール滝)
   五十子会系全日本祖国救済同盟代表。大上の情報源。

【作品概要】 広島に架空の呉原市とした舞台を作り、“警察小説×『仁義なき戦い』”と評された原作柚月裕子の小説を、『日本で一番悪い奴ら』『凶悪』の白石和彌監督が演出を果たし、往年の任侠・やくざ映画の東映がかつての作風を意識した渾身の作品。出演は大上役に大物俳優の役所広司、日岡刑事役を若手人気俳優の松坂桃李、尾谷組の若頭役を江口洋介が演じている他、真木よう子、中村獅童、田口トモロヲ、ピエール瀧、石橋蓮司、竹野内豊たち豪華キャストが脇を固めている。

【あらすじとテキトーなコメント】

1974年、広島の港町・呉原市を舞台に地元の尾谷組と広島市を地盤にする五十子会の間で抗争が勃発。後に第三次広島抗争と呼ばれるこの構想は尾谷組組長の逮捕と五十子会幹部の死で痛み分けとなった。

広島と云えば、「カープ」と「広島風お好み焼き」と「吉田拓郎」「奥田民生」そして、「ヤクザ」ですね(笑)

それから約15年後、1988年。呉原金融の経理士が行方不明になる事件が起きる。呉原金融は五十子会の下部組織の加古村組のフロント組織。

横領した経理士(鶴塀の息子が演じていた)がいたぶられるシーンが残酷!

その加古村組と組長不在の尾谷組の間では緊張感が高まっていた。呉原東署のマル暴の刑事大上(通称ガミさん)と、県警本部から異動してきた若手刑事の日岡は、この経理士行方不明事件から抗争つぶしを狙っている。

松坂桃李演じる日岡ですが、役所広司の相棒としては、白石監督の映画『凶悪』で主演した山田孝之の方が面白くなったと思います。

大上は日岡を連れて尾高組を訪問。そこには組長不在の穴を埋める若頭一ノ瀬がいた。五十子・加古村の挑発が続く中、一ノ瀬は若手の暴走を抑えるのにも限度があると大上に語った。

江口洋介演じる若頭一ノ瀬ですが、江口洋介にヤクザは似合わないと思いました。どちらかといえば江口は警察側の役でしょう。

呉原の闇の社交場、高木里佳子がママを務めるクラブ梨子で偶然にも大上と五十子・加古村が出会う。

真木よう子演じるクラブのママ。いいね!

表向きは全くの偶然と語る五十子・加古村だが、呉原再進出に本腰を入れてきたことが明らかだった。

石橋蓮司演じる五十子会長。いいね! 金子信雄を思い出したわ(笑)

大上は五十子会系の右翼団体代表の瀧井から情報を得た。瀧井は五十子会系の人物だったが、大上とは古い仲で情報のやり取りをしていた。そこから呉原金融の経理士の上早稲拉致の情報を得た。

ピエール滝演じる瀧井。映画『凶悪』で白石監督に気に入られたのでしょう。

その証拠集めに向かう大上は日岡が止めるのも聞かずに、放火・窃盗・違法侵入などの多くの違法捜査をして証拠を得ていくのだった

大上はヤクザより行儀が悪い(笑)

ダーティーな噂の絶えない大上。実は日岡は大上の内偵を本部の監察官から言い渡されていた。監察官は更に大上の持つ手帳を探すように日岡に命じた。

この手帳があるから大上はクビにならずに済んでいるのです。それは…

そんな中、尾谷組の若手構成員が加古村組の手によって命を落とす。実はこの若者は里佳子の恋人だった。報復として尾谷組が加古村組事務所に発砲。抗争は本格化。

里佳子より年下の恋人のようです。

大上は一ノ瀬に思いとどまるように迫るが、逆に三日の猶予を突き付けられてしまう。大上は現在収監中の尾谷組組長に説得を依頼するが不調に終わる。そこで、里佳子を使って加古村組から情報を聞き出した。それによって経理士・上早稲の遺体が発見された。

「警察じゃけぇ、何をしてもえぇんじゃ」と、ほとんど拷問に近い方法で加古村組の幹部から情報を聞き出すのです。

これにより加古村組に捜査が本格的に入った。その一方でマスコミから栗原東署に大上の裏工作疑惑についての問い合わせが入り、大上は自宅待機処分を言い渡されてしまう。

五十子を追い詰める大上の計画は破綻してしまったわけです。

日岡は単独で一ノ瀬に会いに行くものの、大上の不在は約束の反古だと言い渡して突き放してしまう。そして、尾谷組が加古村組幹部を襲撃。捜査の手は尾谷組にも迫った。大上は自宅待機の命令を破って単独行動をし、五十子・加古村と尾谷の手打ちを画策するが双方の条件は、けっして相容れるものではなかった。

大上が組と組の「要」となっていたのです。大上がいなかったら均衡が崩れます。日岡では力不足。

直後に、大上が姿を消す。数日後大上は遺体で発見。多くの暴行の跡がありながらも、公式発表は泥酔したうえでの事故死とされた。

大上は水死体で発見されます。遺体のいたるところに刺し傷や痣がある。事故死のはずはありません。

大上の遺体の状況から大上が五十子・加古村の手にかかって殺されたことを確信した日岡は、一ノ瀬達と組んで五十子会会長五十子正平を襲撃。

日本刀で一ノ瀬が五十子の首を切断!江口洋介に日本刀は似合わないな。

五十子の命を奪った後は、尾谷の若手を実行犯に仕立てて逮捕させるという約束をしていた日岡だが、これを反古にして一ノ瀬ごと逮捕した。

日岡の成長を感じさせる場面です。

その後、大上の手帳の中身を知った日岡は愕然とする。大上の手帳には自身の悪事ではなく、過去から現在までの警察関係者の不正の証拠が記されていた。大上がアンタッチャブルな存在でいられたのもこの情報のおかげだったのだ。

本部の監察官は、自らの不正を握りつぶしたかったので日岡に密偵をさせたのです。一番の悪党は警察幹部なのだ!

さらに、日岡は本部の監察官に報告するために記していたノートに大上のコメントや墨塗りがあったことを知る。

大上は日岡が自分を捜査していることを知っていたのです。大上の叱咤激励のコメントに日岡は号泣!

そして、日岡は里佳子から大上は「かたぎ」のために働いていたこと知らされる。日岡は大上の墓参りをし、大上のような刑事になることを誓うのだった。

大上の形見のジッポーのライターで、大上が残したハイライト1本に火をつけたところで幕!カッコいいエンディングでした。

【率直な感想】

 面白かった! 原作を読んでいないのですが、原作も面白いのでしょう。映画の冒頭でヤクザ抗争の新聞記事のフラッシュにナレーションを被せていくシーンがありますが、70年代東映ヤクザ映画や深作監督へのリスペクトだと思います。「県警対組織暴力」を想起させました。『孤狼の血』は「アウトレイジに対する東映の返答」ヤクザ映画の老舗東映の面目躍如といった映画です。

映画『孤狼の血』予告編