【No.19】

2025年10月29日 有馬和樹(おとぎ話)





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【インタビュー・サマリー】 ※誤字・脱字はご容赦を

● 番組オープニングとおとぎ話の楽曲「カルチャークラブ」採用の経緯

ラジオマガジンのオープニングテーマとして、おとぎ話の「カルチャークラブ」が採用されたことについて、武田砂鉄が妻と相談して決定したことが明かされた。
当初は「少年」という曲も候補に挙がったが、プロデューサーの提案で「カルチャークラブ」に決定し、歌詞の「サブカルチャーはおしゃれの道具じゃない」というフレーズがラジオ番組にふさわしいと評価された。


「カルチャークラブ」は約8年前に制作された楽曲であり、有馬は梅津和夫の漫画を読んだ直後に書き上げたことを語った。
有馬の作詞スタイルは物事を俯瞰的に捉え、距離を置いて観察するような視点が特徴であり、SNSで盛り上がる様子を見て感じた気持ちを表現したと説明。
武田と武田の妻もおとぎ話のファンであり、何度もライブに足を運んでいることが明らかになった。

● 天然パーマのエピソードと過去のインタビュー

武田と有馬の最初の出会いは2012年のコンプレックス文化論の連載で、天然パーマをテーマにインタビューしたことだった。
有馬の天然パーマは小学校時代、ドラえもんを見るためにお風呂を適当に済ませていた結果、頭皮に問題が発生し坊主にした後に始まったという特異な経緯がある。
高校生の時、美容室でオアシスのリアム・ギャラガーのような髪型を依頼したが、美容師に技術的に無理だと断られた経験を持つ。
有馬は当時のインタビューで「ロックもパーマも天然ものが一番強い」と語っており、現在でもその考えは変わっていない。
奇しくもオアシスが来日公演を行ったタイミングで、武田はリアム・ギャラガーを見ながら有馬のエピソードを思い出したと語った。

● おとぎ話の結成とバンドの歴史

おとぎ話は2000年に有馬が大学入学後すぐに結成したバンドで、25年の歴史を持ち、有馬の音楽キャリアはこのバンド一筋である。
オリジナルメンバーで現在も活動を続けており、唯一の大きなトラブルはギターの牛尾が一度バンドを離れたことだった。
牛尾の失踪理由は、有馬がバンドの不振や売れない理由を他のメンバーに押し付けていたことへの反発であり、有馬は自責の念から牛尾に謝罪して復帰を実現させた。
廃校になった小学校を借りたイベントで理科室でトークショー、体育館でライブを行うなど、ユニークな活動も展開してきた。
同じ大学で出会ったメンバーとずっと一緒に活動を続けており、非常に珍しい長期的な関係性を築いている。

● 有馬の作詞スタイルと音楽観

有馬は三上寛の本から「歌手の仕事は言葉の本来の意味を伝えること」という言葉に感銘を受け、イントネーションと同じようなメロディをつけることにこだわっている。
わかりやすい言葉を使いながらも、子供から大人まで同じように解釈できる歌詞を書くことを心がけており、深読みすれば各自が自分なりに解釈できるよう工夫している。
恋愛ソングでも成就や失恋を直接描くのではなく、遠くから眺めているような視点で書くことが特徴であり、小学生の感性で止まっているかもしれないと自己分析。
アニメのテーマソングのような曲を作ることがおとぎ話のコンセプトであり、昭和のアニメにこだわり続けている。
流行の「背中を押す」ような曲とは異なり、隣にいて安心させるだけの存在でありたいという姿勢を貫いている。

● マッチョイズムとの距離感と自己アイデンティティの探求

有馬は昔から「バンドマンはモテるべき」「男だからこうあるべき」という考え方に違和感を持ち続けてきた。
レコードを買った時に自分だけが楽しめればいいのに、なぜみんなと共有しなければならないのかという疑問から自己アイデンティティの探求が始まった。
マッチョイズムやマチズモとは対極の位置にいることを自覚しており、その違和感を音楽で表現し続けてきた。
最近になってようやく自分の考えを言える世の中になり、自分が存在してもいいと思える安心感を得られるようになった。
2023年にリリースしたアルバム「HELL」以降、自分が思った通りに音楽を書く方が今の時代に合うと感じ始め、現在が最も楽に創作できる時期だと語った。


● 現在の創作活動と音楽制作の充実

有馬は長いキャリアを経て、ようやく時代と自分の音楽が合い始め、息苦しさから解放されて創作が楽になったと実感している。
東府中のケトルという喫茶店でのライブでは、新曲10曲を披露し、「こじらせてます有馬」というキャラクターを楽しみながら演奏している。
自分が面白い人間だと気づいたことを明るく語り、自己肯定感が高まっていることが窺える。
音楽家としてのスキルが上がり、できることが増えてきたことで、かつて好きだった曲を今の自分が作ればいいという単純な考えに至った。
ベースの風間はラジオ好きで、大学時代からテレビを持たずラジオだけを聴いており、バンドのツアー移動中も常にラジオを聴いている。

● 初めて買ったレコードとハードロックへの愛

有馬が初めて買ったレコードはとんねるずの「情けねえ」で、B面の「こんな男でよかったら」という曲の「誰でも寂しがり屋」という歌詞に強く影響を受けた。


おとぎ話の音楽には寂しさが通底しており、隣にいてお互いに安心するという関係性だけで音楽を作り続けている。
「俺についてこい」ではなく「任しとけ」という姿勢で、かっこいい人の背中をぼんやり見ている感じが好きだと語った。
メタルやハードロックへの愛は現在も強く、オジー・オズボーンの訃報に泣きながら音楽を聴き続けている。
ロックミュージックの奥底にある繊細な部分を大切にしており、オジーの「CRAZY TRAIN」もバンドを追放された時の心の叫びの曲として深く共感している。


● ライブ予定と番組エンディング

年内最後のライブは12月30日に新代田のフィーバーで開催され、この会場での年末ライブは10年以上続く恒例のイベントとなっている。
武田から有馬に誕生日プレゼントとして、カルチャークラブが収録されたレコードが贈られた。
おとぎ話はAC/DCをパロディしたTシャツなど、大胆なパロディグッズも制作しており、検索しすぎない方がいいと冗談交じりに語った。
有馬の天然パーマの真実は武田の著書「コンプレックス文化論」に詳しく載っており、13年前の写真と現在もほぼ変わらない髪型を保っている。


美容師がリアム・ギャラガーの髪型を無理と断ったことに今では感謝しており、それがなければ今のおとぎ話は存在しなかったと語った。