【No.38】2025年12月4日 井上麻矢(劇団「こまつ座」代表)



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【インタビュー・サマリー】 ※誤字・脱字はご容赦を

■ ゲスト紹介と背景

 ゲストは 井上麻矢(劇団こまつ座 代表)
 井上麻矢氏は作家・劇作家 井上ひさし の次女であり、公演や作品化を担う立場にある。

■ 『木の上の軍隊』映画化の経緯

 ▪︎井上ひさしの遺作級の作品で、2013年初演の舞台を基に映画化。
 ▪︎終戦を知らず木の上で暮らし続けた二人の兵士を描く。
 ▪︎麻矢氏は長年「作品化したい」という思いで沖縄に通い続けてきた。
 ▪︎多数の協力者の参加や自身の行動力で舞台化・映画化を実現。
 
   

■ 井上ひさしの創作姿勢

 ▪︎調べ始めると数年かかるほど徹底的で、締め切りを守らないことで有名。
 ▪︎理由は「深く練った作品は長く愛される」「安易な作品は飽きられる」。
 ▪︎“悪魔が来る”と呼ぶほど、アイデアが降りてくるまで推敲を重ねた。
 ▪︎常に調べものに没頭し、睡眠も短く、亡くなった時に「これで休める」と感じたと麻矢氏は語る。

■ 井上ひさしの言葉・思想
 ● 名言の完全版

  ▪︎「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」に続く長文が存在。
  ▪︎書斎に貼ってあり、自分の文章が基準に達しているかを確認する“チェックリスト”だった。

 ● 仕事観・人生観

  ▪︎「問題は問題として解決し、悩みにすり替えない」
      → 麻矢氏が現在も指針としている教え。
  ▪︎“社会性=身近な気遣い(傘や荷物が後ろに当たらないか)”という考え方。

■ 家族として見た井上ひさし

 ▪︎父の仕事は常に創作に向いており、子供の事故でさえ「どう表現するか」が頭によぎったというエピソード。
 ▪︎晩年にその点を謝罪されたが、職業的本能であり “父親失格ではない” と受け止めたと語る。

■ 井上麻矢自身のキャリア経路

 ▪︎演劇界とは距離を置き、スポーツ紙→ホテルマンを経て、2009年にこまつ座代表に。
 ▪︎ホテルのホスピタリティ、広告のマネタイズ経験が現在の劇団運営に生きている。
 ▪︎当初は演劇界の“熱さ”が苦手だったが、結果的に経験が集約されて現在の役割へ。

■ 戯曲『泣き虫なまいき 石川啄木』について

  

 ▪︎啄木の晩年三年間を扱う戯曲。
 ▪︎初演時(24年前)は井上家の状況(離婚問題)と重なり、一回きりの上演に。
 ▪︎新演出は、家族の衝突や貧困を描きつつも、言葉のユーモアにより“可笑しさ”や“愛おしさ”が浮かび上がる構造が強調される。
 ▪︎井上麻矢氏は大人になった今、家族のぶつかり合いを“人間の営み”として客観視できるようになったと語る。

■ 新演出の特徴(鵜山仁氏演出)

 ▪︎海・生と死の連続性を象徴するような“スケールの大きい”構成。
 ▪︎幻想的な舞台美術で、戯曲の普遍性を強調。
 ▪︎初読みの段階で「意外とコメディになるのでは」という発見があった。

■ 公演情報(2025年)

 ▪︎12月5日〜21日:東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
 ▪︎12月24日:岩手盛岡劇場
 ▪︎12月26日:岩手・西和賀町文化創造館 銀河ホール
 ▪︎啄木役は 西川大貴、演出は 鵜山仁。