CD/本の話題 No.071 ~ No.080

【CD/本 No.071】

JOHN COLTRANE the LOST ALBUM

 6月29日、ジャズ史上最高のサックス奏者ジョン・コルトレーンの完全未発表作「The Lost Album」が発売されたので、早速、アマゾンから取り寄せ聴いてみました。
コルトレーンの新作と聞いて、怪しい出所の劣悪な音質のライブ音源じゃないかと思っていましたが、な・な・なんと名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーによるスタジオ録音じゃないですか!

「スタジオ録音とはいうものの、その出来はどうか?」という余計な心配は、聴いた瞬間に払拭されました。間違いなくジョン・コルトレーンの全盛期「黄金のカルテット」の珠玉の一枚に堂々と仲間入りできるアルバムです。
ハッキリ言います。音楽に「古い」も「新しい」もない! 「New Chapter」も「Old Chapter」もクソくらえ! 「良い」か「悪い」しかない! 「The Lost Album」は、ジャズファン必聴のアルバムだ!


(2018/7/3)
 

【CD/本 No.072】

筒井康隆は危険だ!

 来週の夜電波のゲストは筒井康隆。韓流の次に筒井氏を迎えるところが夜電波らしい(笑)
 先週の土曜日、世田谷文学館で開催中の筒井康隆展(10/6-12/9)に行ってきた。凄い仕事やってるな~!、とその仕事量と多彩さに圧倒された。来館記念に「筒井康隆展」のガイドブックと、刊行されたばかりの河出書房「総特集 筒井康隆: 日本文学の大スタア (文藝別冊)」を購入した。山下洋輔氏や菊地成孔氏が寄稿している。

 最初の記憶は、NHK「少年ドラマシリーズ」の第1作「タイムトラベラー」(1972年)だった。この時、原作が筒井康隆の『時をかける少女』だったことはあまり気にしていなかったのだが、とにかく面白いドラマだったことは覚えている。好評につき続編も制作された。出演者もあまり覚えていないがテレサ野田が出演していた。知らないか?(笑)

 20代の頃、自律神経系の病気で半年間ほど自宅療養していたことがある。音楽を聴くことと小説を読むことだけをやっていた。活字中毒を発症し読みたい本を片っ端から読んだ。この時、筒井康隆にハマった。病気が治ってからも活字中毒は続いた。「48億の妄想」「霊長類南へ」「筒井順慶」「脱走と追跡のサンバ」「俗物図鑑」「家族八景」「おれの血は他人の血」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」「富豪刑事」「大いなる助走」「虚航船団」…記憶に残っているのはこの辺までだ。新潮社「筒井康隆全集」で1巻から10巻まで購入して特典の「最悪の接触」の複製原稿をもらった。しかし、「筒井康隆全集」全24巻をコンプリートした記憶がない。興味がミステリー小説(ロバート・B・パーカー、ローレンス・ブロック、大沢在昌など)に移行したためだろう。そして、老眼鏡が必要になった頃に活字中毒から脱した。今は小説は読まない。しかし、「筒井康隆展」を見て未読の筒井作品を読みたい気分になってきた。筒井作品は危険だ!活字中毒が再発するかも(笑)

筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展 筒井康隆展
(2018/11/27)
 

【CD/本 No.073】

『夜電波本第二巻』と『101』と

 昨年末に発売された『夜電波本第二巻』TABOOレーベルの最終兵器オーニソロジー(辻村泰彦さん)の1stアルバム『101』を買った。
 『夜電波本第二巻』については前書きと後書きしか読んでいないが「これからも彷徨い続けてください、菊地さん」という想いになった。あと、第一巻と同様に巻末のセットリストが縦書きなので読みずらい(笑)
 『101』については、正直に言いますが、あまり好きではないです。夜電波の全曲試聴回でも感じたことだが、辻村さんのハスキーで色気のある歌声がバックバンドのサウンドとポリリズムに馴染んでいないように感じた。辻村さんの歌声はストリングと合わせた方がいいと思う。曲によってはブラス・セクション、ホーン・セクションがあってもいい。辻村さんはホセ・ジェイムズのように「歌声」だけで勝負できるし、アコギ1本でセルソ・フォンセカのような“静けさ”を歌える逸材だと思っている。次作に期待している。
 因みに、『夜電波本第三巻』は刊行されるのだろうか? シーズン8までじゃ中途半端過ぎる。落語でサゲを聞かずに終わってしまったような……「芝浜」だったら、拾った財布が「夢」にされたまま終わってしまったような心持ちだ(笑) どうするのキノブックスさん?

(2019/1/7)
 

【CD/本 No.074】

Come With Me to the Casbah

川崎市高津区にお住いの中村様よりAmazonギフトでCDを頂戴いたしました。大変嬉しいです。この場で恐縮ですが、厚く御礼申し上げます。中村様、ありがとうございました!!


 このCDは、夜電波シーズン7第154回の3曲目「Come With Me to the Casbah」が収録された同名のアルバムです。
オリジナルはUS ATCO RECORDS から1959年にリリースされました。意外にクラシックです。アルメニア系アメリカ人ウード奏者CHARLES "CHICK" GANIMIANを中心にしたグループの演奏です。エキゾチック系モンドミュージックという感じのとても面白い音楽です。ブリジット・フォンテーヌの相方アレスキー・ベルカセムの音楽に共通する響きがあります。このアルバムでは『MY FUNNY VALENTINE』や 『OVER THE RAINBOW』といったスタンダードもカヴァーしていますが、こちらはご愛嬌でした。




フリースタイル  [S7] 第154回 2014年5月9日 セットリスト
 フリースタイル

(2019/1/8)
 

【CD/本 No.075】

ヤマザキマリの作り方

先日、TBSラジオ「伊集院光とらじおと」に漫画家のヤマザキマリさんがゲスト出演されました。これが2回目です。1回目は昨年7月、「オリンピア・キュクロス」第1巻を発売した頃でした。今回はエッセイ「ヴィオラ母さん」の発売に合わせた出演です。

TBSラジオ「伊集院光とらじおと」2019年1月30日(水)
伊集院光、アシスタント:安田美香 ゲスト:ヤマザキマリ



早速、「ヴィオラ母さん」を買って読んでみました。一気に読みました。面白いです。ヤマザキマリさん自身が破天荒な人生ですが、母リョウコさんはマリさん以上に破天荒でした。「この母にしてこの子あり」ということですが、この本は、「ヤマザキマリの作り方」を書いたレシピ本ということかもしれません。

(2019/2/11)
 

【CD/本 No.076】

名盤誕生!セルソ・フォンセカ「TURNING POINT」

夜電波でオンエアされた楽曲で気に入ったものは、時々アルバムを購入していた。夜電波ロスによって何を買っていいかわからなくなってしまった。ツイッターで、音楽ライターやCD屋のおススメをチェックしているが、どうも今ひとつで興味がわかない。
先日、ツイッターでカルナバケーションのカンタス村田さんがセルソ・フォンセカの新作「TURNING POINT」が最高だと評していた。ブラジル音楽に精通するカンタス村田さんの言うことは信用している。この人は若いけれどいい耳をもっている。

 早速アルバムを購入して聴いてみたが、これがヤバイヤバイ!
2015年の大ヒット作「LIKE NICE」に勝るとも劣らない出来栄えなのだ! 伝承的なボサノヴァからのMPB路線にAOR志向を加味した優しいサウンドが素晴らしい。ポルトガル語詩の曲、英語詩の曲がバランスよく配置されている。捨て曲なしの全11曲。繰り返し繰り返し、そして繰り返し聴いている。
アルバム・ジャケット写真でフォンセカが笑っている。フォンセカの歌声が明るい。フォンセカの人生はうまくいっているようだ。

ちなみに、Youtubeで全曲聴けますw ⇒ セルソ・フォンセカ - トピック
(2019/3/25)
 

【CD/本 No.077】

日本ジャズ史に輝く二人の人生

日本のジャズの至宝、1929年満州生れの秋吉敏子さん、1933年宇都宮生れの渡辺貞夫さん。お二人とも今なお演奏活動を続けている。これは凄いことだ!

 書店で偶然に見つけて買った。新書版200頁弱なので一気に読んでしまった。特に戦前から1970年位までが面白かった。貞夫さんが幼少期に初めて習った楽器は「琵琶」だったとか(笑)、秋吉さんとオスカー・ピーターソンが出会ったときの話しとか…。

 わたしは1969年頃から洋楽を聴くようになった。ロック中心だったがジャズも聴いていた。秋吉さんのコンサートは一度だけ行っている。名盤「孤軍」を発表し、秋吉敏子=ルー・タバキン・ビッグバンドで凱旋帰国した時のコンサートだった。場所は郷里、新潟県民会館大ホールだった。「孤軍」のイントロの能楽の部分は録音が流されたが、ビッグバンドの重厚で威厳のあるサウンドに鳥肌が立った。貞夫さんのコンサートは何度か行っているが、最初に行ったコンサートは「カリフォルニア・シャワー」が空前の大ヒットを飛ばしていた頃だった。場所は同じ新潟県民会館大ホールだった。身体を揺らしながら立見で聴いていた。ジャズの洗礼を受けたような圧倒的なコンサートだった。

 著者の西田浩さんはわたしより数年若い。この数年の差が微妙に共感できて面白い。インタビューを中心とした文章は読み易い。願わくば、これがドキュメンタリー映画になったら絶対面白いだろう。二人が生まれた頃から、二人が出会った頃、そして、バークリー留学と帰国してからの活躍を描いたドキュメンタリーである。(数ヵ月前に秋吉さんのドキュメンタリーがNHKで放送されていたが…)何とか映画化してほしい! 再現ドラマ化にしても面白いだろう!

(2019/9/3)
 

【CD/本 No.078】

井上陽水トリビュートを聴く

先月リリースされた井上陽水へのトリビュートアルバム「井上陽水トリビュート」を聴いている。これが実に素晴らしいトリビュートアルバムになっている。
何より参加メンバーの顔ぶれが凄い! ジャンルやレコード会社や世代を超えている。半数は初めて聴くメンバーだったが、いずれも実力者揃いである。陽水と同世代は、今年50周年を迎えた細野晴臣だけである。そして、この素晴らしいアルバムをプロデュースしたのは陽水の娘で作詞家・歌手の依布サラサである。井上陽水を熟知した最良のプロデュースだった。

井上陽水トリビュート
1.ヨルシカ 「Make-up Shadow」
2.槇原敬之 「夢の中へ」
3.King Gnu 「飾りじゃないのよ 涙は」
4.椎名林檎 「ワインレッドの心」
5.宇多田ヒカル 「少年時代」
6.ウルフルズ 「女神」
7.田島貴男 (ORIGINAL LOVE) 「クレイジーラブ」
8.福山雅治 「リバーサイド ホテル」
9.細野晴臣 「Pi Po Pa (Reiwa mix)」
10.iri 「東へ西へ」
11.SIX LOUNGE 「Just Fit」
12.斉藤和義 「カナリア」
13.オルケスタ・デ・ラ・ルス 「ダンスはうまく踊れない」
14.ACIDMAN 「傘がない」
15.KREVA 「最後のニュース」

全曲素晴らしいが、何度も繰り返し繰り返し聴いていると「お気に入り」がハッキリしてくる。「お気に入り順」に並べてみた。

お気に入り
ランキング
感想とか
第1位

14. ACIDMAN「傘がない」
 これはアメリカのハードロック・バンド「グランド・ファンク・レイルロード(GFR)」の名曲「ハート・ブレイカー」の展開とそっくりだ。しかし、素晴らしい! 後半ゆるやかに転調して荘厳にして劇的なカタルシスを迎える。これが一番の「お気に入り」だ。

第2位

15. KREVA「最後のニュース」
 TBSテレビの報道番組「筑紫哲也 NEWS23」のエンディングテーマだった。KREVAの挑戦に天晴れ! この難曲をカバーするだけのことはある。

第3位

13. オルケスタ・デ・ラ・ルス「ダンスはうまく踊れない」
 井上陽水が後に妻になる石川せりに提供した曲。サルサのダンス曲に変貌させたオルケスタ・デ・ラ・ルス。うまく踊れそうな「ダンスはうまく踊れない」に仕上がっている。

第4位

9. 細野晴臣「Pi Po Pa」
 電話がダイヤル式からプッシュ式になったころの曲。細野さんもまだまだ進化を続けている。素晴らしい!

第5位

7. 田島貴男(ORIGINAL LOVE) 「クレイジーラブ」
 山口百恵のアルバムの曲。もともと田島貴男のオリジナル曲じゃないかと思うほど昇華している。オリジナル・ラブだけに(笑)

第6位

12. 斉藤和義「カナリア」
 炭鉱夫がガス発生の危険を察知するために地下に連れて行かれたカナリアの悲哀を擬人化して歌っている。素朴な斉藤和義の歌声と歌唱がいいね。

第7位

10. iri 「東へ西へ」
 ヒップホップと今ジャズの融合か。iriが新しい「東へ西へ」を作り出した。元気が出るパフォーマンスだ。

第8位

11. SIX LOUNGE「Just Fit」
 沢田研二の曲だ。SIX LOUNGE、初めて聴いたがカッコいいバンドだ。

第9位

5. 宇多田ヒカル「少年時代」
 まさに「国民唱歌」である。

第10位

6. ウルフルズ「女神」
 「ブラタモリ」のテーマ曲だったことがある。その時は「オルケスタ・デ・ラ・ルス」がサルサでやっていた。このウルフルズの「女神」も悪くないが…

第11位

4. 椎名林檎「ワインレッドの心」
 安全地帯に提供した曲。菊地成孔ペペ・トルメント・アスカラールがバックを務めているようなタンゴ調のアレンジ。実際、ペペのピアノ林正樹、ベース鳥越啓介が参加。後半、ホーン・セクションによるスイングジャズアンサンブルに展開するが椎名林檎は出てこない。スキャットでスイングしてみなよ! もったいない!

第12位

8. 福山雅治「リバーサイド ホテル」
 福山雅治の清潔感が邪魔をしている。この曲は、もっと嫌らしく、もっとエロく歌わないとダメよね。

第13位

3. King Gnu「飾りじゃないのよ 涙は」
 中森明菜の大ヒット曲。男子が歌っているが、この曲は女子に歌ってほしい。

第14位

2. 槇原敬之「夢の中へ」
 前半で「夢」から「現実」になって行くような演出を加えている。これがウザい(笑) どうせやるなら「現実」から「夢」だろう。

第15位

1. ヨルシカ「Make-up Shadow」
 アルバム1曲目としては最高の選曲。しかし、ヨルシカの女子に「Make-Up Shadow」はどうか…?

おまけ

ジャケット・アートは冴えないが、中身は最高だ!!

(2019/12/27)
 

【CD/本 No.079】

夜電波本、コンプリートならず!?

  「菊地成孔の粋な夜電波」の番組本「第3巻」が発売されたのが昨年4月である。続く「第4巻」でコンプリートすると勝手に思い込んでいたが、なかなか出版する気配がない。
 そこで、キノブックス様のTwitterに問い合わせのダイレクトメッセージを送ってみた……


キノブックス様のTwitterはこちら

 そもそも夜電波の本を出版すること自体が、冒険であり、挑戦であり、危険であり、博奕であり、無謀であり、奇跡であり、物好きであり、「どうかしている」である(笑)。これまで3巻出版しているキノブックス様はエライ!感謝している。 しかし、ここでもう一歩踏み出せないキノブックス様にはガッカリである。これは、箱根駅伝でもう少しのところで最終ランナーにタスキが繋げなかったような悔しさに似ている。無念である(泣)
 し、し、しかし、今は予定していない、のであって、今後予定されることも、という身勝手な希望、根拠のない自信を抱いて生きていこう!(願)

(2020/1/11)
 

【CD/本 No.080】

フリー・インプロヴィゼーションのこと

 当サイトの「AnaDigi」のコーナーはアナログ盤をデジタルに変換した音源を扱っている。そのアルバムのほとんどが1970年代~1980年代に購入した盤で、その中にはフリー・インプロヴィゼーションのアルバムもある。今なお現役で活躍しているアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ、ペーター・ブロッツマン、エヴァン・パーカーなどの巨匠達のアルバムもある。

 昨年、「フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き」という本が出版された。今までにありそうでなかったユニークな本である。表紙の載っている著者ジョン・コルベットの文章、裏表紙の大友良英さん、佐々木敦さん、毛利義孝さんの推薦文を読んでいただければ本書のニュアンスはつかめるだろう。即興音楽に興味のある方におススメである。

 「おススメである。」と言いながら矛盾するかもしれないが、フリー・インプロヴィゼーションを聴いたことがない人が、いきなりこの本に手を出すのは非常に危険である。劇薬なので取り扱いに注意が必要だ(笑)
 とりあえず当サイトのAnaDigiのコーナーで、シュリッペンバッハやブロッツマンやパーカーなどのアルバムを聴いて「カッコいい」「面白い」「楽しい」「わけがわからん、けど気になる」などと感じたら、この本を手に取った方がいいだろう。日常的にフリー・インプロヴィゼーションを聴いている方にとっては、本書を読めば、思わずニンマリして共感するところがあるだろう。
 ちなみに、わたしはフリー・インプロヴィゼーション聴取に「手引き」は必須ではないと考えている。フリー・リスニングでいいと思っている。

(2020/1/13)