映画 No.061 ~ No.070


【映画 No.061】

素敵なダイナマイトリミックス

 話題の映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」のサントラ盤を聴いています。 当初は、サントラ盤を出す予定はなかったようですが、「女優・尾野真千子と原作者・末井昭によるデュエット」の話題性一点押しでソニーが発売を決定したそうです。しかし、そうは言ってもサントラ音源は30分ほどでCDにするには尺足らず。そこで登場するのが菊地さんの私塾「ペンギン音楽大学」リミックス・クラスの生徒の皆さん。「お前ら、この音源使ってリミックスしてみろや!」(こんな言い方はしなかったでしょうが)と課題を提示し出来上がった優秀作品が、サントラ盤の15曲目から19曲目に収録されています。 そして、このリミックスが面白い! すでに15曲目から19曲を100回ほど繰り返し聴いています。


 ...ってことで、「素敵なダイナマイトリミックス大会」のお気に入り順位です。
 第1位: 16.山の音 (Remix ver.1)
 第2位: 15.scandal-X/Remix ver.0
 第3位: 18.山の音 (Remix ver.3)
 第4位: 17.山の音 (Remix ver.2)
 第5位: 19.Expose! ~絵の中の尺八 (Remix ver.)

(2018/3/24)
 

【映画 No.062】

素敵なダイナマイトキャスト

 話題の映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」。 まだ観ていません。 お楽しみは後まで取っておくタイプ...ではないですが、原作を読んでから観ようかと思いまして……原作を読みながら映画のキャストの演技をイメージするのは楽しいことです。よく映画を観て「原作と違っている」とか文句を言う人がいますが、違いも楽しみのひとつでしょう。つまりは、原作も映画も面白ければいいのです。

 監督:冨永昌敬
 原作:末井昭
 脚本:冨永昌敬
 製作:川城和実、太田和宏、古川博志
 エグゼクティブプロデューサー:濱田健二
 プロデューサー:西川朝子、西ヶ谷寿一
 アソシエイトプロデューサー:西宮由貴
 ラインプロデューサー:金森保
 撮影:月永雄太
 照明:藤井勇
 録音:菊池信之
 音響:山本タカアキ
 美術:須坂文昭、北岡康宏
 装飾:須坂文昭
 衣装:小磯和代
 ヘアメイクデザイン:勇見勝彦
 ヘアメイク:外丸愛
 編集:田巻源太
 音楽:菊地成孔、小田朋美
 主題歌:尾野真千子 × 末井昭
 助監督:茂木克仁
 制作担当:刈屋真
 製作年:2018年
 配給:東京テアトル
 上映時間:138分
 映倫区分:R15+
柄本 佑(えもと・たすく)
 主人公:末井昭(すえい・あきら)役
父は俳優の柄本明、母は女優の角替和枝、弟は俳優の柄本時生、妻は女優の安藤サクラ。完全に家業ですね。原作の末井昭さんの若いころにソックリ。
前田敦子(まえだ・あつこ)
 妻:牧子(まきこ)役
AKB48の初代センター。最近はすっかり女優業。
三浦透子(みうら・とうこ)
 愛人:笛子(ふえこ)役
サントリーのCM「なっちゃん」の2代目「なっちゃん」らしいですけど。その愛らしいなっちゃんが愛人役とは…(笑)
峯田和伸(みねだ・かずのぶ)
 心の友:近松(ちかまつ)さん役
銀杏BOYZの人。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」にビートルズ好きの田舎の青年役で出演。昭和の顔を持っている男ですね。
松重 豊(まつしげ・ゆたか)
 警視庁の刑事:諸橋(もろはし)役
ここ数年は「孤独のグルメ」井之頭五郎役でブレーク。名バイプレーヤーです。
村上 淳(むらかみ・じゅん)
 父:重吉(じゅうきち)役
大好きな俳優さんです。歌手UAの元旦那、俳優・村上虹郎の父。昨年のNHKドラマ「マチ工場のオンナ」での銀行の融資担当の役は良かった。演技派だ。
尾野真千子(おの・まちこ)
 母:富子(とみこ)役 そして父になる
先日、和服姿を生で拝見しましたが、小さい人でした。でも、ふざけたことをしたら容赦なく怒られそうな感じがして、ちょいと怖い(笑) 映画「そして父になる」に出演していたな。
中島 歩(なかじま・あゆむ)
 同業の編集者:中崎(なかざき)役
NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演していました。まだ若いですが貫禄あります。
落合モトキ(おちあい・ともき)
 同業の編集者:青島(あおしま)役
映画「桐島、部活やめるってよ」に出演していました。
木嶋のりこ(きじま・のりこ)
 ピンサロ嬢:ユーコ 役
まったく存じ上げません。映画ではお色気担当ですかね。乞うご期待!!
瑞乃サリー(みずの・さりー)
 モデル:かすみ役
まったく存じ上げません。サリーちゃん。。。
政岡泰志(まさおか・たいし)
 ピンサロの店長:長野(ながの)役
まったく存じ上げません。。。でも、何かで見たような・・・。
菊地成孔(きくち・なるよし)
 写真家:荒木さん役
冨永監督は「菊地さんは荒木さんのイメージに合っていた」というようなことを述べていますが、そうは思いません。でも、お二人とも天才ですけどね。
島本 慶(しまもと・けい)
 モデル斡旋業:真鍋のオッちゃん役
いつかどこかで見たようなオッサンだけど思い出せない。
若葉竜也(わかば・りゅうや)
 母の心中相手:礼司(れいじ)役
まったく存じ上げません。心中相手とは...ご苦労様です。
嶋田久作(しまだ・きゅうさく)
 ダッチワイフ職人:佐々岡(ささおか)役
あまりにも「帝都物語」のイメージが凄すぎて。なかなかフツーの役はやらない俳優さん。今回もダッチワイフ職人…(笑)

(2018/3/24)
 

【映画 No.063】


(2018/3/25)
 

【映画 No.064】

すばらしき映画音楽たち @ 新文芸坐

 邦題:すばらしき映画音楽たち
 原題:Score: A Film Music Documentary
 監督:マット・シュレーダー
 脚本:マット・シュレーダー
 製作:ロバート・クラフト
    トレヴァー・トンプソン
    ケニー・ホームズ
    ネイト・ゴールド
    ジョナサン・ウィルバンクス
 製作総指揮:マット・シュレーダー
    戸田信子
 出演者:ハンス・ジマー
    ダニー・エルフマン
    ジョン・ウィリアムズ
    クインシー・ジョーンズ
    レイチェル・ポートマン
    ジェームズ・キャメロン
    トレント・レズナー
    トム・ホルケンボルフ
    ランディ・ニューマン
    アレクサンドル・デスプラ
    スティーブ・ジャブロンスキー
    ブライアン・タイラー
    ジョン・デブニー
    ゲイリー・マーシャル
 音楽:ライアン・トーバート
 撮影:ケニー・ホームズ
    ネイト・ゴールド
 編集:マット・シュレーダー
    ケニー・ホームズ
 製作会社:エピクレフ・メディア
 配給:グラヴィタス・ヴェンチャーズ(英語版)
    アンプラグド(日本)
 公開:2017年6月16日(北米)
    2017年8月5日(日本)
 上映時間:93分
 製作国:アメリカ合衆国
 言語:英語
 面白い音楽ドキュメンタリーでした。監督の情熱がほとばしるような映画でした。
マット・シュレーダー監督は「映画音楽作曲家に関するドキュメンタリー映画を作りたい」という欲求から脱サラし、クラウドファンディングで資金を調達し、自ら監督・脚本・編集を行いました。なんと60人以上にインタビューしたそうです。
映画監督や映画音楽の巨匠たちが続々登場しますが、長々としたインタビューを見せられるのではなく、1センテンスほどの短いインタビューと、それの実証映像を積み上げるように映画が進行します。このテンポが心地よいのです。飽きさせません。映像と音楽の蜜月関係を見事に描いています。納得させられました。
 ひとつ残念なのは、このドキュメンタリーは、あくまでもハリウッド映画が対象です。つまり、本題は【ハリウッド映画のすばらしき映画音楽たち】ということになります。
映画音楽を語るにはハリウッドだけじゃあまりにも狭すぎますけどね。
(2018/3/27)
 

【映画 No.065】

SDS @ 池袋シネマ・ロサ

映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」(ダイ語:SDS)を観てきました。

 原作を読んでから観ようと思っていたのですが、我慢できずに観てしまいました。平日に映画を観るのはなかなか厳しいですが、上映中の池袋シネマ・ロサの最終回が20:00からだったので何とか間に合い観ることができました。

 最初、末井昭...って誰? だったのですが、顔写真を見て思い出しました。「パチンコ必勝ガイド」のオジサンだ!! 30年ほど前? 深夜番組で着物で女装していた“変なオジサン”(ゴンゾーロ末井)です。勿論、雑誌「ウィークエンドスーパー」や「写真時代」は見たことはあります。立ち読みメインですけどね。しかし、当時はエロが目当てだったので編集長のことは気にも留めませんでしたけどね(笑)

あらすじです。
≪1955年、小学校1年生だった末井昭の家には、結核で入院していた母親が帰ってきており、結核がうつるのではないかと怖がられ、周囲から孤立していた。そんな母親の所に隣家の息子が、父親の不在を狙い足繁く通っていた。ある日、学校から家に帰ると、鉱山で働く父親が保管していたダイナマイトを持ち出し、母親が隣家の息子と山の中でダイナマイトで心中をしたと知らされる。
 それから何年か経ち、18歳で家を飛び出した末井は、デザインを勉強したいと思い、昼は工場勤務をし、夜にデザイン学校に通っていた。そして、風俗店の看板を描く仕事を貰い始め、色々な仲間と出会い、何故か、雑誌の世界に入って行く。エロ雑誌の編集へと入るが、何から何まで自分でやらなければならず、気が付いたら編集長へと登り詰めていた。「NEW SELF」という雑誌を創刊し、その時代の寵児であるがごとく、エロ雑誌旋風を巻き起こし、警察の検閲を受けながらも、衝撃的な雑誌を発刊し続けたが、わいせつ文書図画販売容疑で雑誌は発禁となってしまう。それにもめげず、新しく「ウィークエンドスーパー」という雑誌を創刊、そして、カメラマン荒木と出会い「写真時代」という雑誌を創刊し大ヒットするが、やはり写真が過激すぎて発禁になってしまう。そして、エロ雑誌から足を洗った末井は「パチンコ必勝ガイド」を創刊し再起を果たしたのである。≫

 主演の柄本祐さん、飄々とした演技に父親・柄本明さんのDNAを感じます。この役は祐さんの当たり役だと思います。末井さんの奥さん役の前田敦子さん、演技がわかりやすくて上手い! 凄い女優になると思う。 母親役の尾野真千子さん、セリフは少ないですがその表情に魅せられました。隣家の青年を誘惑するときの薄い笑みは真に迫っていた。心の友・近松さんを演じた峯田和伸さん、ほんとにミュージシャンなのか? 名のある劇団の出身じゃないのか?と思うほど上手い!≪地で行く≫という感じのする自然な演技だった。カメラマン荒木役の菊地成孔さん、おいしい役ですけど、実際のアラーキーさんにはタトゥーはありませんでしたから、菊地さんのタトゥーに違和感というか、しっくりしないというか、目立ちすぎるというか、、、ここはデニーロ・メソッドのような荒業は必要なく、タトゥー隠しシートとかサポーターとかファンデとかでタトゥーを隠してほしかったな。
アイドル(前田さん) vs. ロック(峯田さん) vs. ジャズ(菊地さん)という対戦モードだと1位アイドル、2位ロックということになっちゃいますけどね(笑)

 この映画は長いか? 長いと思います(笑) 最後の15分位は要らないような気がします。オリジナルの原作は82年ころまでの出来事で終わるのですが、監督は末井さんが着物で女装した衝撃的な絵を、柄本さんで再現したかったのでしょう。つまり、99年の文庫版の原作で記述されている「パチンコ必勝ガイド」までは引っ張らないと柄本さんによる女装は再現できない……ってことで長くなってしまった、のではないかと…。
 この映画は、ユースの方には理解不能な部分(風俗店やストリーキングやアンダーヘア問題など)もあると思いますが、ミドルエイジ以上の方には楽しめる完熟期の昭和風味の映画です。ニンマリしながら観てください!
(2018/3/29)
 

【映画 No.066】

気になる日本映画達@新文芸坐

 池袋の新文芸坐で「気になる日本映画達〈アイツラ〉2017」をやっている。
初日の「夜空はいつでも最高密度の青色だ」と「南瓜とマヨネーズ」を観てきた。2作とも面白かった。この2作は対照的なストーリーの映画で、「夜空は~」は若い男と女が一緒になっていくストーリー、「南瓜と~」は若い男と女が離れていくストーリー。
対照的だがどちらも爽やかなエンディングを迎える。

『舟を編む』の監督石井裕也さんがメガホンを取り、最果タヒさんの原作詩集を見事映像化。 主演に石橋静河さん(石橋凌さんと原田美枝子さん夫妻の娘)、池松壮亮さん、共演に松田龍平さん、田中哲司さん、三浦貴大さんら実力派俳優による恋愛映画。
 看護師として働く美香(石橋静河)は女子寮で一人暮らし。夜の街を自転車に乗っている。向かう先はガールズバー。そこでアルバイトをしている。建設現場で日雇いとして働く慎二(池松壮亮)はボロアパートで一人暮らし。彼は左目がほとんど見えない。少し年上の智之(松田龍平)、中年の岩下(田中哲司)らとつるんでいる。ある晩、慎二は智之と岩下に誘われてガールズバーに行った。カウンターに現れたのは美香だった。数日後、美香は同僚と一緒に知り合ったばかりの男たちと居酒屋にいた。トイレに立った美香は入り口に近い席に慎二が座って文庫を読んでいるのに気付いたが無視する。慎二は駅で電車を待っていたが人身事故で遅れていたので再び夜の街に引き返し、歩いて帰ろうとた。そこでばったり美香と会う。「なんでこんなに何度も会うの?どうでもいい奇跡だね」と美香。ふと見上げると月が見えた。「月ってあんなに青かったっけ?」と慎二。ストリートミュージシャンが「がんばれ~」と声を張り上げて歌っていた。
 ……それから色々なことがあって……
美香は慎二の部屋で並んでテレビを見ていた。「朝までにニュース速報がくると思う。地震や、爆発でまた誰か死ぬかもしれない。そうしたらどうする?」「とりあえず募金する」と慎二。「…そうだね、募金しよう」と美香。「朝起きたらおはようって言おう、ご飯を食べるときはいただきますって言おう。そういうことだよね」。慎二は美香の頭にそっと手をあて「ありがとう」。
 ひとつ気に入らないのは「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の「だ」は余計じゃないか!(笑) 原作通りにする必要はない。「夜空はいつでも最高密度の青色」にした方がスッキルする。「だ」が付いただけで★マイナス1だ(笑)

 原作は魚喃キリコによる日本の漫画で「恋愛漫画の金字塔」と称賛されているらしい。
 主人公のツチダ(臼田あさ美)は、同棲しているせいちゃん(太賀)の「ミュージシャンになりたい」という夢を支えるべく、キャバクラでお金を稼ぐことを決意する。そんな彼女の前に、客として店を訪れた安原(光石研)が現れ、愛人契約を打診される。お金に困っていた彼女は安原の誘いに乗ることにした。ツチダがそのようにしてお金を生み出していることを知らないせいちゃんは、ヒモのような生活を送っていた。
 ある日、安原から渡されたお金をせいちゃんが発見し激怒する。その出来事をきっかけに働きに出ることを決意したせいちゃん。ツチダの方もかつて働いていたライブハウスに戻るが、そこで元カレのハギオ(オダギリジョー)に再会する。ハギオとの再会を果たしたツチダは、昔のように彼にのめり込んでいく。一方のせいちゃんはアルバイトに力を入れるようになっていき、二人はすれ違いの生活になってしまった。仕事を始め、バンド仲間との交流も再開したせいちゃんは、失いかけていた音楽への情熱を取り戻した。
せいちゃんはツチダに同棲解消を告げた。
 せいちゃんはツチダが働いているライブハウスでライブをすることが決まった。彼女が楽屋で荷物の片づけをしている時、仕事を終えたせいちゃんが現れる。久し振りの再会で照れくさそうな表情を見せる二人。せいちゃんはツチダに言った「新曲が出来たから聴いてくれないか?」 楽屋で披露されるささやかなライブだった。せいちゃんはコンガを叩きながら歌った。それを聴いてツチダは号泣した。これはせいちゃんの新たなスタートでありツチダが最も望んでいたことでもあったのだ。



 ツチダが号泣するシーンは泣けた! 臼田さんの泣きっぷりが凄かった!! NHKのバラエティ「LIFE 人生に捧げるコント」の臼田さんからは想像できない見事な泣きっぷりだった。
ちなみに、せいちゃんのコンガは大儀見元さんが指導したらしい。冨永監督はこの作品のあと現在公開中の「素敵なダイナマイトスキャンダル」を制作した。何という落差のある仕事だろうか!(笑) ある意味、面白すぎて映画監督はやめられまへんな!(笑)
(2018/4/3)
 

【映画 No.067】

映画「スローガン」@新宿K's CINEMA

 反体制的な生きざまで知られる歌手・俳優・映画監督のセルジュ・ゲンスブールが主演・音楽を務めたラヴ・ストーリー。監督はピエール・グランブラ。共演は本作で出会い交際の後、夫婦となったジェーン・バーキン。
 売れっ子CMディレクターのセルジュ(セルジュ・ゲンスブール)はベネチアCM映画祭でグランプリを受賞。彼はそこでイギリス人女性エヴリン(ジェーン・バーキン)と知り合い一目惚れ、たちまち深い仲に。セルジュには赤ん坊を抱え、二人目の子供を妊娠中の妻フランソワーズ(アンドレア・パリジー)がいた。セルジュとエヴリンは度々逢瀬を重ねる。そんな時、エヴリンはモーターボートを巧みに操る逞しい青年に魅かれ始める。それを知ってセルジュは嫉妬する。再びベネチアCM映画祭でグランプリを獲得したセルジュと当地へ向かったエヴリンは、そのままその青年と駈け落ちしてしまった。さらに数年後、またもセルジュはベネチアCM映画祭でグランプリを受賞。優勝杯を抱えて歩いていたセルジュに、若い美女がぶつかる。優勝杯が落ちて割れた。セルジュと美女は見つめ合う。セルジュの新たな恋の始まりを予感させる。
 ネタバレ関係なしの映画。若い娘が好きで浮気性の中年男とイギリス訛りのフランス語が可愛い世間知らずの若い娘の束の間の恋物語。CMディレクターの主人公セルジュにとって若い娘の感性と肉体は、中年男に「活力・想像力・閃き」を与えてくれる資源だったのだろう。
 実際の話、この映画は007シリーズの音楽で有名な作曲家ジョン・バリーと離婚直後のジェーン・バーキン(20歳)とブリジット・バルドーと泥沼不倫関係にあったセルジュ・ゲンスブール(40歳)が出逢い恋に落ちた作品だ。しかし、映画のようにすぐに別れたりはしなかった。事実婚を続け二人の間にシャルロット・ゲンスブールが誕生した。色々問題もあったようだがセルジュが病没(1991年)するまで二人の交流は続いた。お互いがアーティストとしてリスペクトしていたのだ。
 今までゲンスブールとバーキンの共演では「ガラスの墓標」しか観たことがなかった。二人の濃厚な濡れ場がありスクリーンの一部分にボカシの入る映画だ。その映画より「スローガン」の方がいい。特に20歳のジェーン・バーキンは可愛い。「イギリス訛りのフランス語」だということはすぐにわかる。たどたどしい日本語で話すアグネス・チャン…古っ!(笑)…よく知らんけど来日したKポップのアイドルが憶えたばかりの片言の日本語で話す可愛さのような感じだ。あと、時折、テレビCMをイメージさせるような演出、例えば指パッチンすると魔法をかけたように映像が変化するなどのコミカルでポップな演出が面白い。
 余談だが、俳優の忍成修吾さんと篠井英介さん。二人ともクセのある役を演じることが多いが存在感のある俳優だ。二人とも初めて見たとき「若いころのゲンスブールに似ている」と思った。ゲンスブールの特徴的な鷲鼻から口元にかけて似ている。印象派労力士だ(笑)


(2018/4/4)
 

【映画 No.068】

映画[ラッキー]@新宿シネマカリテ

いい映画でした! 素晴らしい!
「パリ、テキサス」「レポマン」「エイリアン」などで知られる俳優ハリー・ディーン・スタントンの遺作です。そもそもスタントンが「パリ、テキサス」で脚光を浴びたときすでに58歳でした。この映画を撮影したときは89歳です。この映画はスタントンの遺作というよりスタントンの遺書だったんじゃないかと……

舞台はアリゾナ州砂漠地帯の田舎町。一人暮らしの老人ラッキーは朝起きるとラジオをつけタバコ(アメスピ)を吸い体操する。身支度を整え歩いてダイナーに行ってコーヒーを飲みながらクロスワード・パズルに熱中する。帰りにコンビニによってミルクを買う。帰宅してからテレビのクイズ番組を観たりクロスワード・パズルをやる。パズルの答えがわからない時は知人に電話して答えを聞き出す。夜になると馴染みのバーに行きブラッディ・マリー(ウォッカとトマトジュースのカクテル)を飲みながら常連客と談笑する。これがラッキーの日課だ。ラッキーは酒もタバコもやるが身体は至って健康だった。そんなラッキーは常に自分の人生や死や孤独について一人向き合っていた。ダイナーやバーで店員と常連客を相手に口論することもあるが、ラッキーの人徳というべきか、ちょっと偏屈なところがある爺さんてことで親しまれていた。

 この映画は、ユースの方には退屈かもしれません。孤独で偏屈な爺さんの繰り返される日常を描いたドラマです。殺人があったり美男美女が出てきたりエロい場面があったり激しいアクションがあったり、しません(笑)  只々孤独な爺さんの日常を描いた人間ドラマです。ユースの方はこれを≪マンネリ≫と呼ぶかもしれません。しかし、それは違います。ラッキーはクロスワード・パズルなどで毎日新しい知識・体験を得ています。些細なことですがラッキーにとって毎日が新しいのです。亀が歩くように少しずつ死に向かっていると感じさせます。(映画の最初と最後に亀が画面をゆっくりと横切る場面がある)
 主演のスタントンは第二次世界大戦で沖縄戦に出兵しました。調理担当だったそうです。戦友から「前線に行かなくてラッキーだな」ということでラッキーというあだ名をつけられたそうです。つまり、この映画の主人公ラッキーはスタントン自身のことなのです。ダイナーの場面で、客の退役軍人の爺さんによって語られる沖縄戦の下りはスタントンの経験談なのです。この映画の脚本はスタントン自身ではありませんが、スタントンの経験談や考え方が脚本に反映されているのです。
 メキシコ系の子供の誕生日パーティーの場面、ひとしきり盛り上がった後、突如、ラッキーがスペイン語で静かに歌い始めます。この曲はメキシコ系なら誰でも知っている曲らしく、次第に全員で歌い始めるのです。陽気な曲ではありません。しっとりとした良い曲する。恋人と別れるような曲だったような…誕生日に相応しくないような気もしましたが… このシーンは良かった! 何だよ!ラッキー!スペイン語うまいじゃん的な驚き、そして感動です。不覚にも落涙寸前だったばい。
 ちなみに、スタントンの友人である映画監督のデヴィッド・リンチが出演しています。リンチの役は自分が死んだとき全ての財産を飼っていた亀に引き渡したいのだが、亀が脱走してしまったと弁護士に相談する変なオジサンの役でした。
R.I.P. HARRY DEAN STANTON as Lucky
(2018/4/10)
 

【映画 No.069】

映画「ゲット・アウト」@新文芸坐

めちゃめちゃ面白い映画です! パンフレットに「米映画レビューサイト99%大絶賛!」とあります。これは決して大袈裟でも誇大広告でもないでしょう。正真正銘のスリラー映画の大傑作です!!
ニューヨークに暮らす黒人の写真家クリスは、白人の彼女ローズと同棲していた。ある週末、クリスはローズに誘われて、初めて彼女の実家へと向かうことになった。郊外を走るクリスたちだが、突然車に鹿が激突してきた。間一髪のところで難を逃れたクリスとローズ。念のためにと警察を呼ぶと、パトカーから降り立ったのは白人の警官。運転者はローズなのに、同乗のクリスにまで「身分証を見せろ」と迫ってきて…………
その後は何事もないまま、ローズの実家に到着。「彼氏が黒人で大丈夫なのか?」というクリスの不安をよそに、彼女の両親と弟はクリスを大歓迎してくれる。気味が悪いほどフレンドリーなのである。「黒人に偏見はない」とローズの父は言うが、クリスが周りを見ると、庭の手入れをする管理人は黒人男性、家政婦は黒人女性だった。それはかつての奴隷制度下の南部特有の風景にも見えていた。黒人である自分が、黒人の使用人から世話を受けるという居心地の悪さを感じるクリスだった。ローズの母親は精神科医であり、愛煙家だった夫を禁煙成功に導いたという。愛煙家のクリスは禁煙セラピーを断るが、結局はそれを受け入れるはめに。母と向き合い言葉を交わすうちにクリスは…………
クリスが訪れたのと同じタイミングで、近所の人々が集まる年に一度のパーティーが開催される。クリスも温かく迎えられるが、なぜかみんな口にするのは黒人の話題ばかり。そのパーティーで、クリスはある黒人の若者を見つける。「黒人がいて心強い」と声を掛けるが、年配の白人女性の夫だと名乗るその若者は、どうも会話がかみ合わない。服装も態度も不自然なのだった。クリスは彼をどこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せない。気になったクリスはその若者をスマホで盗撮しようとするが、誤ってフラッシュを点灯させてしまう。その瞬間、目を見開き、鼻血を出しながら豹変し「出ていけ!出ていけ!」と若者がクリスに襲い掛かってきたのだ。“何かがおかしい”と察したクリスはローズと一緒に実家から出ようとするが…………………

あーーー、もうなんも言えねぇ!なんも言えねぇ!(笑) これ以上言ったら罪になる。これから観ようとする人の快感を奪うことになる。あーーー、もうなんも言いたくねぇ!なんも言いたくねぇ!!(笑) 
(2018/4/18)
 

【映画 No.070】

映画「ブレードランナー2049」@新文芸坐

 池袋の新文芸坐で2本立て。大傑作スリラー映画「ゲット・アウト」を観た後、この映画「ブレードランナー2049」を観たのですが、はっきり言ってつまらない映画でした。潤沢な資金力で制作されたことはわかりますが、革命的SF映画「ブレードランナー」の続編としては余りにも凡作です。上映時間が160分を超えています。これは長過ぎます。テンポアップして120分位に凝縮すれば絶対面白くなります。残念!!

 この映画はアカデミー賞受賞作です。音響編集賞ノミネート、録音賞ノミネート、美術賞ノミネート、撮影賞受賞、視覚効果賞受賞 輝かしい功績です。 しかし、これが何を意味しているか、ってことですよ。 つまり、遠回しで「この映画はつまらない」と言っているようにしか思えませんでした。オンタイムで「ブレードランナー」(1982年)を観て感動したひとりとして続編「2049」は…………観なかったことにしよう(笑)
 1本目に「2049」を観て、2本目に「ゲット・アウト」を観れば良かったかも。映画鑑賞は観る順番も大事ですね。
(2018/4/19)