映画 No.121 ~ No.130


【映画 No.121】

ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス@早稲田松竹 2019/5/18

【概説】
人気ファッションブランド「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のデザイナーで、エリザベス女王から「デイム」の称号も与えられたビビアン・ウエストウッドの生き様を描いたドキュメンタリー。パンクムーブメント誕生秘話、デザイナーとしての躍進と挫折、無一文からの再出発など、世界的人気ブランドとして成功するまでの波乱万丈な道のりが、秘蔵映像や痛快な名言の数々とともに明かされる。3年間にわたって密着取材を行い、ショーの裏側や新規出店を指揮するプロフェッショナルとしての姿、そして環境保護アクティビストとして精力的に活動する姿を捉えた。さらに、モデルのケイト・モスやナオミ・キャンベル、エディターのカリーヌ・ロワトフェルドら、ファッション界を牽引してきた豪華な顔ぶれが次々と登場し、ヴィヴィアンの魅力を語る。

【感想】
 世界的人気ブランドとして成功するまでの道のりを描いたドキュメンター映画。波乱万丈はあったか? それなりに山や谷はあったが命にかかわるような重篤な事はなかったようだ。今も元気に活躍している。
 ひとつだけ印象的なシーンがあった。ヴィヴィアンが製作した服がマスコミに取り上げられ、テレビに出演することになった。奇抜な服を着たモデルが登場した。番組の女性司会者が嘲笑しながら尋ねた。「あなたは、笑いを取りにきたのですか?」 スタジオの観客も爆笑している。しかし、この時、ヴィヴィアンは、冷静に受け答えしていた。ヴィヴィアンは「腹が立つというよりも何故みんなが笑っているのか理解できなかった」と回想していた。ヴィヴィアンの自信と誇り、そして、逞しさを感じたシーンである。少し怖いが純粋な人だと思う。
 ヴィヴィアンの作る服には「気品」がある。やはり、映画のタイトル通りエレガンスという言葉がふさわしい。ドキュメンタリー映画としては大したことはなかったが、ヴィヴィアンという女性の「凄味」を感じた。
 ちなみに、原題は「WESTWOOD: PUNK, ICON, ACTIVIST」だ。ウェストウッドとは、伝統にとらわれず、あこがれの的となった、積極行動主義者ということである。

(2019/5/24)
 

【映画 No.122】

万引き家族@早稲田松竹 2019/5/26

【概説】
 高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
 冬のある日、近隣の団地のベランダで震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく・・・・・・

【感想】
 素晴らしい映画だ。なんという凄い脚本なのか!
高齢化問題、年金問題、社会格差、家庭内暴力、児童虐待、子育て問題、若者の自殺 … 様々な問題を正面から突き付けるのではなく、脚本・演出でわかりやすく、さりげなく描ている。是枝監督は凄い! キャストも素晴らしかった。希林さん、安藤サクラさんが凄い。 団地のベランダで震えていた幼い女の子の表情は硬かったが、映画の後半、表情が柔らかくなっていた。これは演技でできることではないだろう。撮影現場で、じっくり時間をかけて「家族」の一員になっていった結果だろう。
 この映画についてはネタバレは「罪」になる(笑)それでも、万引き家族の家族構成ぐらいはいいだろう。
 先日、WOWOWで放映されていたが、映画館で観たかったので我慢していた。昨年、カンヌでパルムドールを取ったと報道されたとき「なんてダサいタイトルなんだ…」と思ったが、見終った今、「万引き家族」で良いんじゃない!と思える。あと、入れ歯を外した希林さんが、一昨年亡くなった自分の母親によく似ていた。不思議と嬉しくなった。


(2019/5/27)
 

【映画 No.123】

日日是好日@早稲田松竹 2019/5/26

【概説】
 二十歳の春、大学生の典子は母の勧めで週に一度お茶の稽古に通い始める。従姉妹の美智子を伴い向かった武田先生の茶室で、初めて目にする作法に戸惑うばかり。どんなことにも理由を求め、頭の中は疑問だらけの典子に「意味なんてわからなくていい。『お茶』はまず形から」と武田先生は説くのだった。やがて就職、結婚で美智子が去り、就職に失敗した典子はアルバイトをしながら、ひとりお茶の稽古に通い続ける。
 回数を重ねることによって、はじめて自分のものになる。理屈から入っては到底たどり着けない境地へ向かう。将来の夢を模索し、悩み、挫折を味わい、焦燥感に苛まれながらも、お茶の稽古に通い続ける。それから20数年にわたり武田先生の下に通うこととなり、お茶や人生における大事なことに気がついていく。

【感想】
 大学生時代から始めた茶道、そこから20数年間を追って描いている。大学生→お茶→就活→お茶→就活失敗→お茶→友人の結婚→お茶→バイト生活→お茶→婚約の破談→お茶→恋愛・結婚→お茶・・・・・・ただただ淡々と描かれている。すべてが同じ熱量で描いているところが良い。見事な演出だと思う。お茶の場面は、数台の定点カメラで撮ったかのような超シンプルな映像だ。演者の衣装や茶室の美術も素晴らしい。希林さん演じる武田先生に生活感が感じられないのがいい。100%茶道の先生を演じている。主人公の典子が「子供の頃に観たフェリーニの『道』はわからなかったが、最近観たらわかるようになった」というようなセリフがある。これはお茶によって得られる「効能」を意味しているのだろう。
 この映画を10代、20代で観たら「平坦でつまらない!」となったかもしれないが、滅びの時が近づいているシニアには共感するところが多いのではないだろうか。
 ちなみに、フェリーニの『道』は10代の頃に観た。父親は「ジェルソミーナは良かったな」と言っていたが、ワッチは、ただ暗くて哀しい映画という記憶しか残っていない。


映画で登場した掛け軸が気になったので調べてみた。
No.
掛け軸
解釈
1
日日是好日
にちにちこれこうじつ
文字通りには「毎日毎日が素晴らしい」という意味。 そこから、毎日が良い日となるよう努めるべきだと述べているとする解釈や、さらに進んで、そもそも日々について良し悪しを考え一喜一憂することが誤りであり、常に今この時が大切なのだ、あるいは、あるがままを良しとして受け入れるのだ、と述べているなどとする解釈がなされている。
2
薫風自南来
くんぷうみなみよりきたる
爽やかな初夏の風が心地よく感じられるこの季節新緑の間を吹き抜け、若々しい緑の香りをもたらしてくれるという意味。
3
風従花裏過来香
かぜはかりよりすぎたってかんばし
風にはもとより香りがないけれど、花のそばを通ってきた風は、良い香りがする。
4
清流無間断
せいりゅうかんだんなし
清らかな水は、絶え間なく流れ続ける。
5

たき
この場面で典子は滝を見たのです!
6
莫嫌冷淡無滋味、一飽能消萬劫飢
きらうことなかられいたんにしてじみなきことを、 いっぽうよくまんごうのうえをしょうす
嫌うこと莫(なか)れ冷淡にして滋味無きことを、一飽(いっぽう)よく万劫(まんごう)の飢えを消す。面白くないからといって嫌うな。ひとたび悟れば永遠に迷い悩む事はない。
7
達磨画
だるまえ
達磨大使は、禅宗の開祖を呼ばれる人物。 修行の為に9年間壁に向かって座禅をし、手足が腐ってなくなったと言われる。 目が大きいのは、自分の心を見据える様。 日本では、達磨は七転び八起きの意味もあるとして、無病息災や家内安全、その他祈願するという意味の縁起物となった。
8
不苦者有智
ふくはうち
どんな逆境にあっても智慧があればそれを乗り切ることができる。 だからこそ、順境にあっても智慧を磨いておくことが大切である。
9
聴雨
ちょうう
雨の降る音を聴く。
10
掬水月在手
みずをすくえばつきてにあり
水面に浮かぶ月はただ1つ。 けれど、その水を手ですくってみれば、掌中の水面にも月がある。いつでも、どこでも、見るもの、聞くもの、在るものすべてが何一つとして仏法の真理から離れたものは無い。
(2019/5/28)
 

【映画 No.124】

ビールストリートの恋人たち@早稲田松竹 2019/6/1

【概説】
2018年アメリカ映画。1970年代、ニューヨーク。19歳のティッシュと22歳のファニーは幼い頃から共に育ち、自然と愛を育んだ若き黒人のカップル。そんな2人に子供ができ、幸せの頂点にいるはずだったが、ファニーは無実の罪で留置所にいた。身に覚えのない強姦罪の疑惑を晴らすために、家族と友人たちはファニーを助け出そうと奔走するが……

【感想】
 子供はちゃんと産まれたし、ティッシュとファニーも健在だ。しかし、ハッピーエンドではない! 強姦の被害者は故郷のプエルトリコに帰ってしまい裁判ができない。そもそもファニーは無罪だ。ファニーは、性格に問題のある白人警官に目をつけられていた。白人警官は被害者を脅迫し「ファニーにやられた」と証言させたのである。

 ラストは……それから数年が経ち、生まれた男の子も愛くるしい少年となっていた。刑務所に面会にきたティッシュと息子アロンゾ。ファニーのいない家庭内でも、ティッシュは毎日子供にパパのことを話している様子が伺えます。3人で手を取り合い、アロンゾがたどたどしく祈りを捧げます。「神さま、パパをお護りください」と。一見すると、ファミレスで食事をしている親子のように見えるが、ここは刑務所なのだ。
 こんな飾ったようなラストじゃ納得がいかない! 作者ジェームズ・ボールドウィンは、この不条理を「怒り」ではなく「祈り」を持って幕を引いたのだ。でも、それでいいのか? どこにも救いがない。モヤモヤ感の残るラストだった。

 音楽は良かった。ニーナ・シモン、アル・グリーン、ビリー・プレストン、ジョン・コルトレーン・クインテット、マイルス・デイヴィスなどの演奏が挿入曲として使われている。しかし、オリジナル・サウンド・トラックには、これらの曲は入っていない。 あと、1970年代のニューヨークの街並み・建物・服・装飾品・車・地下鉄の落書き・・・・・・みんなカッコいい!


(2019/6/4)
 

【映画 No.125】

私はあなたのニグロではない@早稲田松竹 2019/6/1

【概説】
『私はあなたのニグロではない』(I Am Not Your Negro)は、ジェームズ・ボールドウィンの未完成原稿『Remember This House』と彼の1970年代のメモや手紙を基にしたラウル・ペック監督による2016年のドキュメンタリー映画である。
サミュエル・L・ジャクソンがナレーションを務めるこの映画は、ボールドウィンによる公民権運動指導者のメドガー・エバース、マルコム・X、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの回想を通してアメリカ合衆国の人種差別の歴史、そして米国史についての彼の個人的な考察が描かれる。第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。

【感想】
 「殺人や不倫は神が赦す。でも人種統合は無理。認められない」 驚くべきことに、これがアメリカの白人社会の総意だった。≪だった≫と過去形にしたが、一部の白人・地域ではまだこの考えは生きている。アフリカ大陸から誘拐してきた黒人を白人は家畜のように扱った。殺人を犯しても神は赦すが黒人(家畜)と同等になるのは認められない、と考えるのはDNAに組み込まれた暗黒の歴史だ。DNAが完全に書き換わるまでは黒人差別はなくならないだろう。

印象に残ったシーンがある。
ボールドウィンが番組に出演し、ある初老の白人男性と対談する場面だ。その白人は“自分は中立的な立場にいる”と思っているようなリベラル派だ。その白人が言った。「なぜ肌の色にこだわるのですか。肌の色は違っても苦悩は同じであり、みんな障害を乗り越えるものでしょう」。ボールドウィンはこう言い返した。「論点が違います。人種の壁はある。例えば、あなたは日常で殺されるかもしれないと考えたことがありますか?」と。

 肌の色が白か黒かで生死を分けてしまう。リベラルな白人男性の何とも あさはかと言うか、甘いと言うか、短絡的と言うか、単純と言うか、安直と言うか、表面的と言うか、綺麗ごと過ぎると言うか……この白人男性は、肌の色が黒いことだけで「(白人から)保護されなければならない対象」であることを認識していない。
このドキュメンタリー映画は、 ボールドウィンが人種問題について考えていることを書き綴った未完成原稿を映画化したものだが、基本はサミュエル・L・ジャクソンのナレーションをメインとして、そこに関連画像や動画をペタペタ貼り付けただけの安直な感じの仕上がりになっていた。


(2019/6/5)
 

【映画 No.126】

追悼・内田裕也@新文芸坐

今年3月に亡くなった内田裕也さんを追悼する映画祭が新文芸坐で組まれた。全16作品。ほとんどの作品はオンタイムで観ている。内田裕也さんを偲んで6作品観た。(故・若松孝二監督の作品を観たかった)

内田 裕也(うちだ ゆうや、1939年11月17日 - 2019年3月17日)は日本のミュージシャン、俳優。本名は内田 雄也(読み同じ)。身長174センチメートル。血液型はB型。
 兵庫県西宮市生まれ。1959年に日劇ウエスタンカーニバルで本格的にデビュー。以降、内田裕也とザ・フラワーズのヴォーカリスト、フラワー・トラベリン・バンドのプロデュース活動などを経て、1970年代後半からは俳優としても活動し映画出演や映画監督なども手掛ける。また、映画『コミック雑誌なんかいらない!』や『エロティックな関係』などでは脚本も担当した。映画の代表作には他に『水のないプール』『十階のモスキート』『魚からダイオキシン』などがある。若松孝二監督の作品に出演した。口癖は「ロケンロール」(Rock'n Roll)。
 2018年9月15日に妻の樹木希林と死別。その約半年後となる2019年3月17日5時33分、肺炎のため東京都内の病院で死去。享年79歳。

内田裕也はアメリカ帰りのミュージシャン。かの地でレゲエに目覚める。今では有名プロモーターになった昔のバンド仲間に自分がニューヨークで見出だしたレゲエ・バンドのプロモーションを頼むため帰国するが、昔のバンド仲間は変節していた。 アメリカから帰国するシーンがカッコいい。サングラスに、カーキ色ツナギ、肩にはデカいラジカセをかけ、頭にはデカいヘッドフォン、そして、洋モクのKOOLワンカートンを小脇に挟んでる。仲間の軟弱化した「変節」は、そのまま時代の「変節」と言い換えてもいいだろう。その「変節」に対抗する姿がカッコいい。ハングリー精神を忘れたらいかん!と若松孝二監督が言っているようだ。

何と言っても中村れいこ。タモリ倶楽部の黎明期「愛のさざなみ」というミニコントでタモリと共演していた。中村れいこのくちびるが、すいたらしい(魅力的な、感じがいい、好感が持てる、セクシーなという意味)。大好きだった。
この映画で展開されることはレイプだ。クロロホルムで女を寝かせてからレイプするという実際の事件がベースになっている。最後は、自分もクロロホルムで眠ってしまい御用となる。しかし、レイプされた女は強姦の訴訟を取り下げてしまう。そして、最後の最後に、内田裕也は水のないプールに寝そべって「勝利宣言」のような笑みを浮かべるのだ。 男として「(中村れいこと)うまいことやりやがって!」と思ってしまった(笑)

離婚や昇進試験失敗などで慢性的な金欠で、八方塞がりになった警察官が自暴自棄になって郵便局に強盗に入るという映画だ。この作品も「水のないプール」と同じく、実話がベースである。内田裕也の演技が素晴らしい。「水のないプール」の時も良かったが、さらに強烈なインパクトを感じた。特にクライマックスの郵便局を襲うシーン。迫真の演技で、見事に壊れた人間を表現していた。内田裕也の演技には不思議なリアル感がある。

おニャン子クラブ、松田聖子と神田正輝の結婚、三浦和義ロス疑惑事件、日航ジャンボ機墜落事故、豊田商事会長刺殺事件などの時事ネタを題材に「恐縮です」が口癖のワイドショーレポーターのキナメリ(内田裕也)が直撃していく。現実の再現という部分はあるものの、それを上回る内田裕也の存在感が漲る。「人権無視」で「国民の代表」という自惚れた考えのマスコミ(a.k.a. マスゴミ)の虚虚実実のレポート合戦。ワイドショー化した日本国民のバカさ加減こそ「コミック雑誌」に勝る面白さということだ。

内田裕也の探偵物語。「好みの女を見るとバスタブから出る所を想像してしまう」という探偵だ。肉食系の美人秘書ミキ(加山麗子さん)は良いのだが、内田裕也を誘惑する女性が暗くて湿っていて感じ悪かった。この映画は初めて見た。

「エロチックな関係」のリメイク。パリでオールロケーションで撮影した作品。内田裕也、ビートたけし、宮沢りえ、監督は若松孝二。宇崎竜童、ジョー山中等の裕也ファミリーが脇を固めている。宮沢りえの美しさはグレードが違う。今どきのAKBとかHKTとかSKEとかとか…10000人のアイドルが寄ってたかってかかっても、この時の宮沢りえの美しさ、可愛さ、女性らしさにはかなわない。パリのカフェでひとりでいる宮沢りえ、ただそれだけで絵になる。

(2019/6/17)
 

【映画 No.127】

新聞記者@MOVIX川口 2019/7/7

【あらすじ】
 東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名 FAX で届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかに・・・

【感想】
残念なラストでした!
吉岡は大スクープの続報として杉原の名前を公表したいと考えていました。杉原も自分の名前を公表しても構わないと了承していました。しかし、杉原は、子供が産まれ、多田から「外務省に戻してやる」という甘い言葉をかけられ苦悩していました。自分の名前が公表されれば、世間的にはヒーローであっても、官僚としては「終り」ですからね。
吉岡と杉原は横断歩道で向かい合っていました。そこで、映画は終わるのです。
有耶無耶感が半端ない! あとは映画をご覧になった方が自由に想像して下さい的なラストです(笑)

実は伏線がありまして、亡くなった吉岡の父も新聞記者で誤報を苦に自殺したのでした。(実は誤報ではなくハメられたのですが)つまり、吉岡も杉原の裏切りによって記者生命を絶たれるか、或は自殺に追い込まれるか…という結末を想像しました。 この平凡な想像を越えるラストが観たかった! 残念な映画です。
余談ですが、内閣情報調査室で杉原達がやっている仕事は、ツイッターで政府にとって有利になる「デマ」を書き込んだり、政府を批判しているアカウントを炎上させるような仕事だったのです。これがエリート官僚の仕事か? これはちょっと笑えました。


 エンディングで流れた主題歌。いいね! 
(2019/7/9)
 

【映画 No.128】

DO THE RIGHT THING@早稲田松竹

【作品概要】
パブリック・エネミーの過激なラップにのせて描く力作で、全米で公開されるや多くの話題を巻き散らし、国内外問わずあらゆるマスコミに取り上げられた話題の映画。ブルックリンの貧しい黒人街の暑い夏を舞台に、その日暮らしのアルバイター、街にたむろするアル中の老人たち、ピザ屋を経営するイタリア系の親子、小さな商店を営む韓国人夫婦などの生活を、スラングにあふれたセリフで交錯させながら、ユニークな住人たちのリアルな姿が描かれていく。やがて、街を覆う夏の暑さに刺激された彼らのエゴイズムはぶつかり合って、街中を巻き込んだ暴動に突入していく……。

【感想】
素晴らしい人間ドラマだった!
猛暑が続くブルックリンの黒人街に住む人々の人間模様が描かれたドラマです。サル親子以外は黒人です。しかし、根底に人種問題はあるものの、映画のストーリーとして首尾一貫したテーマがあるわけではありません。映画の後半20分で大きな展開があります。サルが大音量のラジオ・ラヒームのラジカセをバットで叩き壊したことで、最終的にサルの店は暴徒化した住民によって破壊されてしまいます。ムーキーが暴徒の扇動者のようになります。しかし、事件後、ムーキーは、サルに最後の給料をもらいに行きます。全焼した店の前で呆然と座り込むサルに、給料を要求するムーキー。週250ドルの給料ですがサルは100ドル紙幣を丸めて1枚づつ、怒りを込めてムーキーに投げつけます。5枚投げつけました。500ドルです。店を失った悔しさや虚しさはあるもののムーキーに対しては友情のような感情があったのでは……まぁ、登場人物のほとんどはエゴイストですが(笑)

余談ですが…本作は、第44代アメリカ合衆国大統領バラク・オバマが妻のミシェル・オバマと初めてのデートで観に行った映画だそうです。ニューズウィーク誌は「一生に一度は観る価値のある映画ではあるが、デートで観るような内容の映画ではない」と評したようです。


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/8/5)
 

【映画 No.129】

ブラック・クランズマン@早稲田松竹

【作品概要】
KKKとはアメリカ南北戦争(1861年?1865年)以後に発足した白人至上主義を唱え黒人やユダヤ系を差別し敵視する団体で、そのメンバーはクランズマンと呼ばれていた。KKKの全国組織は1920年代に崩壊し、その後は各地で小さな組織が活動を続けている。
『ブラック・クランズマン』は1970年代のアメリカで黒人警官がKKK系団体の調査のため、白人になりすまし、その組織の悪と爆弾テロと戦う物語だ。実話に基づいたロン・ストールワースの原作である。アメリカを代表する黒人監督スパイク・リーの、現代アメリカに残る人種差別主義への批判が込められた映画だ。

【感想】
最後の最後で、恋人になったロンとパトリスが自宅でマッタリしているところに、突然、ドアをノックする音がします。ロンとパトリスは銃を持ちながらドアを開けます。扉の向こうはKKKの儀式だったのでした。…… (KKKは無くなっていないことを象徴的に描いたつもりでしょうが)…… このシーンは要るかね?監督!
エンディングで、2017年、米バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義グループに反対する集団に車が突っ込み女性が轢き殺された衝撃的なニュース映像などが流されます。 …… このニュース映像は要るかね?監督!


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/8/6)
 

【映画 No.130】

アルキメデスの大戦@MOVIX川口

【作品概要】
昭和8年(1933年)、第2次世界大戦開戦前の日本。日本帝国海軍の上層部は世界に威厳を示すための超大型戦艦大和の建造に意欲を見せるが、海軍少将の山本五十六は今後の海戦には航空母艦の方が必要だと主張する。進言を無視する軍上層部の動きに危険を感じた山本は、天才数学者・櫂直(菅田将暉)を軍に招き入れる。その狙いは、彼の卓越した数学的能力をもって大和建造にかかる高額の費用を試算し、計画の裏でうごめく軍部の陰謀を暴くことだった。

【感想】
面白かった! テンポが良くてストーリーもわかりやすい。天才数学者・山本を演じた菅田将暉が、難しい数学の公式を黒板にスラスラ書きながらセリフをいうシーンは圧巻だ。そして、敵役の平山を演じた田中泯の存在だ。そこに田中泯が存在するだけで、その作品の品格が高くなる。最後に平山が云う「日本人は負け方を知らない。最後のひとりまで戦おうとするだろう。だが、国を象徴するような巨大戦艦があったらどうだろう」。平山は日本の敗戦を確信していた。日清・日露に勝利、満州国の建国などイケイケドンドンの日本人とは違う。戦艦大和は「よりしろ」(神霊が寄りつくもの)だと云っていた。「よりしろ」が倒れれば日本人の戦意も喪失すると考えていたのだ。
面白い作品だが、天才数学者の山本は巻尺を使って戦艦を測量していた。巻尺?マジか? 他に測量機はなかったのかと思ってしまった(笑) 映画はフィクションであっても、もう少しリアリティが欲しい。


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/8/7)