映画 No.051 ~ No.060


【映画 No.051】

映画「爛(ただれ)」@新文芸坐

製作年:1962年
監督:増村保造
脚本:新藤兼人
出演:若尾文子、田宮二郎、水谷良重、弓恵子、藤原礼子
解説:
 浅井(田宮)は本妻の柳子にはつくづくいや気がさしていた。嫉妬に泣きわめく柳子との生活を清算しようとする浅井。とうとう浅井は弁護士を立てて柳子と離婚した。浅井と増子(若尾)は前より良いアパートに移った。離婚した柳子は郷里で狂い死にした。そんな時、増子の姪の栄子(水谷)が訪ねて来た。果樹園の息子との縁談を嫌って家を飛び出して来たのだ。栄子は浅井の許しを受けて増子と一緒に生活することになった。増子は子供を生める体に返して貰らう手術をうけるため入院した。その留守中、浅井と栄子は関係を持った。これを知った増子は栄子をはげしくののしり追い出した。だがそれでも不安な増子は芳子と相談して栄子を結婚させることにした。結婚の前日、栄子と浅井は山のホテルで秘密の時間をもった。しかしそれを知らない増子は栄子の花嫁姿を見て満足気だった。
 印象的だったのは、田宮が若尾と水谷を誘い「浦和にうなぎでも食べに行こう」と車で行く場面。3人で食べるには多過ぎると思えるほどの蒲焼きの量だった。どう見ても6人前はあっただろう。江戸時代から浦和近郊は沼地が多くうなぎが獲れたそうだ。
田宮と水谷の濡れ場に入院していたはずの若尾が突然現れた。≪女の勘≫というやつである。修羅場である。若尾は髪を振り乱して、水谷につかみかかり、引き倒し、蹴っ飛ばす、水谷も必死に応戦するという大乱闘!!! フツ―であれば、この場面、ギャーーーーとか、ワーーーとか、この泥棒ネコーーーとか、コンチクショーーー、とか嫉妬に狂って泣き叫びながら乱闘すると思うのだが、、、、無言なのだ、、、田宮は茫然と二人の無言の乱闘を見ているだけなのだった。この場面の演出と演技が凄い! 増村監督は若尾文子について「追い込めば本気になって発狂状態を演じてくれる」と語ったそうだが、確かに凄かった。 女は怖い!(笑)
(2018/2/5)
 

【映画 No.052】

映画「赤い天使」@新文芸坐

製作年:1966年
監督:増村保造
脚本:笠原良三
出演:若尾文子、芦田伸介、井上大吾、川津祐介
解説:
 昭和十四年、西さくら(若尾文子)は従軍看護婦として天津の陸軍病院に赴任した。その数日後、消灯の後の巡回中、彼女は数人の患者に犯されてしまった。そして、二カ月後、深県分院に転属となった彼女は、軍医岡部(芦田伸介)の指揮の下で忙しい毎日を送っていた。一つの作戦ごとに、傷病兵は何台ものトラックで運ばれてきた。大手術が毎日のように行なわれ、手術台の傍の箱には切断された手足があふれていた。いつしか、さくらと岡部は相思相愛の仲になっていた。やがて岡部は応急看護班を編成して前線にいくことになり、さくらも行動を共にした。しかし、前線を走るトラックは、まだ目的地に着かないうちに、営林鎮集落で敵の包囲を受けた。しかも、極度に衛生状態の悪い集落ではコレラが発生していた。 そして、間もなく、中国軍の攻撃が始まった。そして、圧倒的な中国軍の前に、全員が散っていったのだった。援軍が到着した時、さくらは ……
 この映画は以前一度観た。いつだったかは覚えていないが、新文芸坐の前身、文芸坐だったように思う。
 映画の前半、重症の兵隊の手足を切断するシーンの悲鳴とノコギリの音、目を閉じ、耳をふさぎたくなったが、なんとか耐えた。
 映画の後半、若尾が芦田の軍服を着て上官の真似をするシーン。つまり看護婦による上官コスプレである。今日明日死ぬかもしれない極限状態の場面で、コスプレで遊ぶのである。 残酷な殺戮シーンよりこの局面での≪笑み≫のほうが圧倒的な悲壮感がある。凄い演出だ!!! ここが戦場でなければ二人には明るい未来があったかもしれない …… そう思わせてからの、ラストシーンへの突入なのである。 …… この映画は、もう二度と見たくない名作である。まだ観ていない人は一度は観ておくべき名作である。
(2018/2/5)
 

【映画 No.053】

映画がマイブームになってきたかも?!

 最近よく映画を観る。昨年公開された「ベイビー・ドライバー」を観てから映画熱が再発したようだ。何回目かの映画のマイブーム到来かも。
 最初に映画がマイブームになったのは40年ほど前のことだ。上京して西武池袋線の椎名町駅近くに住んだ。池袋の隣の駅だ。池袋の文芸坐によく通った。2本立てで350円か450円位の頃だ。柔らかい映画から堅い映画まで何でも観た。にっかつロマンポルノ、アクション映画、フィルムノワール、コメディ映画、任侠映画、ATG、洋画邦画問わず文芸坐でかかる映画は何でも見た。毎週土曜日のオールナイトにもよく行った。5本立ての時もあった。映画を観終わって始発で帰る。夏場は映画館を出ると外は明るいので徒歩で帰宅したこともあった。眠いけれど気持ちのいい朝だった。
 余談だが、文芸坐の隣は文芸坐ル・ピリエという小劇場だった。浅川マキさんのライブに何度か行った。文芸坐のライブでゲストに原田芳雄さんが出演した時のことは忘れない。二人とも故人になってしまった。そして、文芸坐も文芸坐ル・ピリエもなくなってしまった。
 椎名町駅近くに住んでいたのは1年間だ。その後、吉祥寺に引っ越しても文芸坐には通い続けたが、吉祥寺のジャズ喫茶に通うようになってから徐々に足が遠のいた。それから10年周期位で映画がマイブームになる。今度は第四次マイブームになるかも知れない。文芸坐から新文芸坐に代わっても何故か落ち着く場所なのだ。なかなかに妖しい地帯の映画館だけれどね(笑) また今週末も行こう!
 ちなみに、今月25日(日)の「ベイビー・ドライバー 爆走絶叫上映」のチケットは完売したそうだ。チケットは早々にゲットしてある。どんな上映会になるか楽しみだ。
(2018/2/6)
 

【映画 No.054】

三連休は名作映画6本@新文芸坐

邦題:何がジェーンに起こったか?
原題:What Ever Happened to Baby Jane?
監督:ロバート・アルドリッチ
脚本:ルーカス・ヘラー
原作:ヘンリー・ファレル
製作:ロバート・アルドリッチ
出演:ベティ・デイヴィス、ジョーン・クロフォード
配給:ワーナー・ブラザース
公開:1963年(日本)
上映時間:134分
製作国:アメリカ

 ホラー映画ではないのに怖い映画。ベティ・デイヴィスの見事な演技と彼女が演じたジェーン・ハドソンの狂気に圧倒された。情緒不安定でアル中のジェーン、最後は完全に精神が崩壊してしまう。幼児退行。ジェーンは、幸せだった子供の頃の精神世界に帰って行った。
ジェーンが子供の頃、父親にねだっても買ってもらえなかったソフトクリームを、最後は姉(ジョーン・クロフォード)に買ってあげる。半身不随の姉はジェーンに虐待され続けるが、もとはと言えば姉の復讐心が原因なのだった。二重三重にも伏線が絡み合ったストーリーが面白い。
 ベティ・デイヴィスと言えば、キム・カーンズが歌って大ヒットした「ベティ・デイヴィスの瞳(Bette Davis Eyes)」を想起するが、この映画のベティ・デイヴィスの演技から歌のイメージを想像することはできない。
邦題:砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード
原題:The Ballad of Cable Hogue
監督:サム・ペキンパー
脚本:ジョン・クロフォード、エドマンド・ペニー
製作:サム・ペキンパー、ウィリアム・ファラーラ
出演:ジェイソン・ロバーズ、ステラ・スティーヴンス、デビッド・ワーナー
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
配給:ワーナー・ブラザース
公開:1970年(日本)
上映時間:121分
製作国:アメリカ

 「ワイルドバンチ」「わらの犬」「ゲッタウェイ」「ガルシアの首」「戦争のはらわた」等々、数々の名作を世に送り出した巨匠サム・ペキンパーの作品。「砂漠の流れ者」の製作時期は「ワイルドバンチ」と「わらの犬」の間である。
「砂漠の流れ者」はサム・ペキンパー自ら“自分のベスト・フィルム”だと語っているそうだ。バイオレンスの巨匠として名高いサム・ペキンパーだが、この映画は温かい。ちょっぴりお色気やギャグもあり。助演女優のステラ・スティーヴンスは、PLAYBOY誌のプレイメイトでもあった。サム・ペキンパーのお気に入りだったに違いない。その演出でわかる。
邦題:マッドマックス
原題:Mad Max
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジェームズ・マッカウスランド、ジョージ・ミラー
製作:バイロン・ケネディ
出演:メル・ギブソン
音楽:ブライアン・メイ
撮影:デヴィッド・エグビー
編集:クリフ・ヘイズ、トニー・パターソン
配給:ワーナー・ブラザース
公開:1979年
上映時間:93分
製作国:オーストラリア

バイオレンス・カーアクション映画の傑作。
愛妻家で子供にも優しい優秀な警官マックス(メル・ギブソン)が マッド(狂人)になる映画。近未来のオーストラリアが舞台。凶悪な暴走族ナイトライダーによって愛犬を殺され、同僚の警官を焼き殺され、幼い息子もひき殺され、妻も重体にされてしまったマックスが悲しみに暮れ、やがて復讐の鬼となってナイトライダーをひとりひとり殺していくという復讐劇。
 ちなみに、1979年、この頃はCG技術が発達していなかったためスタントマンが演じていた。「スタントマン2名が死亡」という報道もあったが、実は死んではいなかった。死ななかったことが「奇跡」だというのが真相のようである。まさに無謀とも思える程のカーアクションの連続なのだ。
邦題:マッドマックス2
原題:Mad Max2: The Road Warrior
監督:ジョージ・ミラー
脚本:テリー・ヘイズ、ジョージ・ミラー、ブライアン・ハナント
製作:バイロン・ケネディ
出演:メル・ギブソン
音楽:ブライアン・メイ
撮影:ディーン・セムラー
編集:マイケル・マルソン、デイヴィッド・スティーヴン、ティム・ウェルバーン
配給:ワーナー・ブラザース
公開:1981年
上映時間:91分
製作国:オーストラリア

 前作「マッドマックス」より200%面白い!!
「マッドマックス」の世界的大ヒットを受け、10倍の費用をかけて製作されたバイオレンス・アクション映画の傑作。観客も騙されるオチがいい。
核戦争後の荒廃した世界。パンク・ファッションの暴走族などを描いた世界観は、その後のアクション映画に多大なる影響を与えた。劇画「北斗の拳」もその一つ。 前作「マッドマックス」と同様にCGはほとんど使っていないだろう。生身のアクションとしてはこれが限界、これが究極か。
邦題:マッドマックス 怒りのデス・ロード
原題:Mad Max: Fury Road
監督:ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラサウリス
製作:ジョージ・ミラー、ダグ・ミッチェル、P・J・ヴォーテン
出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース・バーン
音楽:ジャンキーXL
主題歌:MAN WITH A MISSION×Zebrahead 「Out of Control」(日本版エンディングソング)
撮影:ジョン・シール
編集:マーガレット・シクセル
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2015年
上映時間:120分
製作国:オーストラリア、アメリカ

 初めて見た。
 多くのリピーターを生んだだけのことはある。とにかく面白さが止まらない。第88回アカデミー賞、10部門ノミネート、最多6部門受賞。まずは、すべての登場人物のメイクや衣装、武器、重火器の製作を手掛けたデザイナー達に拍手を送りたい。これは素晴らしいアートだ! さすがに、2015年製作の映画だからCGを使っている。爆発シーンなどは周囲の背景と違ったCGの質感があって気になったが、それでも納得してしまう面白さだ。完全に頭を空っぽにしてくれる映画だ。
邦題:ブレードランナー = ファイナル・カット
原題:Blade Runner The Final Cut
監督:リドリー・スコット
脚本:ハンプトン・ファンチャー、デヴィッド・ピープルズ
原作:フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
製作:マイケル・ディーリー、チャールズ・デ・ロージリカ(ファイナル・カット)
出演:ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング
音楽:ヴァンゲリス
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2007年
上映時間:117分
製作国:アメリカ

 オリジナル「ブレードランナー」(1982年)は公開当時、劇場で観て大感激したことを覚えている。
舞台は、新宿歌舞伎町のような、博多や台湾や香港にあるような屋台が林立する歓楽街。何故か「強力わかもと」の看板。常に酸性雨が降っている。脱走したレプリカント(人造人間)を判別し見つけ出した上で「抹殺」する任務を負うのが、警察の専任捜査官「ブレードランナー」である。主人公・デッカード(ハリソン・フォード)は優秀なブレードランナーだ。
 戦闘用男形レプリカントのバッティ(ルトガー・ハウアー)に追い立てられ、デッカードはビルの屋上へ逃れ、隣のビルへ飛び移ろうとして転落寸前となる。しかし、寿命を悟ったバッティはデッカードを救い上げ、最期の言葉を述べた後、穏やかな笑みを浮かべながら死んでいく……バッティ最高!! ルトガー・ハウアー最高!! ハリソン・フォードが食われた!!
 ちなみに、デッカードも高性能レプリカントだという説があったが……

  老後は毎日映画を観て暮らしたい。本気でそう思った三連休だった。そんな日が来るかしら…
(2018/2/14)
 

【映画 No.055】

仁と義の映画@新文芸坐

監督/脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎
製作:市川南、佐野真之
出演:岡田准一、役所広司、有村架純、平岳大、東出昌大
配給:東宝、アスミック・エース
公開:2017年
上映時間:149分
製作国:日本
監督/脚本:北野武
製作:森昌行、吉田多喜男
出演:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、大杉漣
配給:ワーナー・ブラザース、オフィス北野
公開:2017年
上映時間:104分
製作国:日本
 2時間半の映画ですが「関ケ原の戦い」の場面は1時間ほどです。
これはもったいない!! 
決戦までのフリが長過ぎます。2時間半のうち正味2時間の「関ケ原の戦い」が見たかった。否、「100%関ケ原の戦い」でもいいと思うけど。
天下分け目の関ヶ原の戦いが半日で決着したのは有名な話です。
西軍の小早川秀秋の裏切りが敗因という説が一般的ですが、どうもそうじゃないらしい、というところに焦点を当てて、石田三成、徳川家康、小早川秀秋、毛利輝元などの立場から、決戦の開始から決着するまでの間に何があったのか、布陣図を使って分かりやすく、どんな心理戦、かけ引きがあったのか、回想シーンを交えて、戦いのシーンをもっと濃密な時間にできたはずだ。
あと、有村架純さんが演じたくノ一初芽ですけどね。はっきり言ってこの映画に必要かしら。初芽が映ると決戦の熱量がガクッと下がりました。
良かったのはキムラ緑子さんが演じた北政所です!!! ノーメイクでもキムラ緑子さんは公家っぽいというか大奥っぽい顔していますよね。
 どうしても先日急逝した大杉漣さんに見入ってしまいました。元証券マンで暴力団・花菱会・会長を好演しておりました。大杉さんと言えば高橋伴明監督のピンク映画の常連だったことを思い出します。名バイプレイヤーでした。まだまだ活躍して欲しかった。残念です。
 この映画『アウトレイジ 最終章』については、特に感想はありません(笑) ヤクザの痴話喧嘩が発展し、コリア・マフィアを巻き込んで派手なトンパチを繰り広げ、最終的に大友(ビートたけし)が自分で自分を殺して終わるという結末です。ネタバレなんて関係ない映画です(笑)

(2018/2/28)
 

【映画 No.056】

空海 KU-KAI 美しき王妃の謎@MOVIX川口
ベイビー・ドライバー 爆走絶叫上映@新文芸坐

原題:妖猫傳 Legend of the Demon Cat
監督/脚本:チェン・カイコー
原作:夢枕獏
製作:角川歴彦
出演:染谷将太、ホアン・シュアン、阿部寛、チャン・ロンロン、松坂慶子
配給:東宝、KADOKAWA
公開:2017年
上映時間:132分
製作国:中国・日本合作
原題:Baby Driver
監督:エドガー・ライト
製作:エドガー・ライト、ナイラ・パーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
出演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム
配給:ソニー・ピクチャーズエンタ
公開:2017年
上映時間:113分
製作国:アメリカ
 珍しく高2の息子が観たいというので2人で行ってきました。
意外にも、否、失敬、まぁそれほど期待もなかったのですが、面白かった!!
これは日中版ハリーポッターです!! 先ずは150億円を投じただけのことがある壮大な唐の町の再現、絢爛豪華な美術・衣装に圧倒されます。ストーリーもわかりやすく、ラストに向けて一気に駆け上がるような高揚感があります。
 この映画、一つの映画で二つの映画のような趣きがあります。 日本では弘法大師「空海」が主人公ですが、この映画の中国版タイトルは「妖猫傳」です。楊貴妃を主人公にした映画とも言える側面があるからです。
 主演の染谷将太が良かった。常に微笑みを絶やさない表情が何とも魅力的です。染谷さんの中国語は完璧だったらしいです。
 ちなみに、歴史が好きな息子は、少し期待外れだったようです。超天才・空海のシリアスな映画を期待していたようです。
息子はまだ、原作者・夢枕獏のことを知らないから…(笑)
 ベイビー・ドライバー、これで3回目です(笑)
「爆走絶叫上映」というイベントに行ってきました。どんなイベントなのか興味はあったのですが、正直言って大したことはなかったですね。
銃撃戦になるとクラッカーを鳴らし、音楽が流れるとタンバリンを叩き、ラブシーンになるとヒューヒューとか奇声を発し、悪役にはヤジを飛ばし… 今どきの若者は、この程度のことで盛り上がるのか、否、失敬、今どきの若者たちの「盛り上がりたい気持ち」の強さを感じました。まぁ、日本は平和ですね。これでいいのだ!!! いいのか?(笑)
 ベイビー・ドライバー、何度見ても面白い!!!
ちなみに、ベイビーの養父ジョセフを演じたCJジョーンズさん、誰かに似ている、なと思っていたのですが、思い出しました。 昭和生まれの人ならご存知でしょう。スリランカ生まれの英会話教師アントン・ウィッキーさんです。ほぼ労力士でしょう(笑)
(2018/3/2)
 

【映画 No.057】

あゝ荒野(前篇・後篇)@新文芸坐

監督:岸善幸
原作:寺山修司
脚本:港岳彦、岸善幸
企画:河村光庸
製作:河村光庸、瀬井哲也
プロデューサー:杉田浩光、佐藤順子
出演:
  菅田将暉(沢村新次/新宿新次)
  ヤン・イクチュン(二木建二/バリカン建二)
  木下あかり(曽根芳子)
  モロ師岡(二木建夫)
  高橋和也(宮本太一)
  でんでん(馬場)
  木村多江(君塚京子)
  ユースケ・サンタマリア(堀口/片目)
製作年:2017年
製作国:日本
配給:スターサンズ
上映時間:前篇;157分 後篇;147分
映倫区分:R15+

(前篇:あらすじ)
 2021年。新宿歌舞伎町。少年院から出た新次。復讐の相手・裕二はプロボクサーになっていた。韓国生まれ、吃音で、対人恐怖症の建二。父親の暴力で家を出る。新次と建二が偶然に出会う。二人はボクシングジムをやっている片目の勧誘でボクシングを始める。新次はプロボクサーになり裕二を倒すことを誓う。新次のリングネームは新宿を縄張りとしているから「新宿新次」。建二のリングネームは散髪屋に勤めているから「バリカン建二」。新次は年上の建二を兄貴と呼んだ。建二は新次に心を開いた。
(後篇:あらすじ)
 2022年。新次は宿敵裕二に勝利する。新次の闘志を見るうちに建二は新次と戦いたくなる。同じジムにいては対戦は叶わないので建二はジムを移籍する。建二は連勝を続けた。そして、ついに新次VS建二の対戦。建二は何度もダウンした。新次は「兄貴!立てよ!兄貴!」と叫んだ。健二は立ち上がった。そして決定的なパンチを受けた建二は二度と立つことはなかった。健二は死んだ。そして、新次は廃人になったような目で……何を見たのだろう。あゝ荒野

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 登場人物の「繋がり」が面白い。新次と建二。新次の自殺した父親と建二の父親。新次と彼女。彼女の母親と片目。新次の母親とジムのオーナー。偶然ではあり得ない「濃い」繋がりだ。
 日本アカデミー賞最優秀主演男優賞は菅田将暉(新次)だった。文句はないが、ワタシならヤン・イクチュン(建二)にも同賞をあげたい。吃音でうまく話せない建二だが松田聖子の「あなたに逢いたくて」を見事に歌った。「兄貴!スゲェじゃん!!」と新次。ほとんど笑わない建二が恥ずかしそうに笑った。このシーンは泣けた。

 それにしても、監督は何故、東京オリンピックが終わった2021年に設定したのだろうか? 映画は、新次と建二の交友・成長を軸にして、高齢化社会、介護問題、消えない3.11の爪痕、原発問題、自殺志願者の増加などの社会問題を描いている。
つまり、監督は「何がオリンピックだ!そんなもんやってる場合か?!バカヤロー!」と言いたかったのだ、と勝手に解釈している(笑)
(2018/3/9)
 

【映画 No.058】

王家衛4本立て@新文芸坐

 オールナイトで映画を4本観た。ウォン・カーウァイ監督作品4本である。今までウォン監督の作品は「ブエノスアイレス」しか観たことがなかった。
 ウォン監督は映像作家だと思う。映画の舞台が汚いところだろうが、殺風景なところだろうが、人物だろうが、静物だろうが、その一瞬一瞬を切り取って額に飾ってもいいほど美しくスタイリッシュに描いている。美術館で絵画を鑑賞しているような気分にさせられる。今回、4本まとめて観て、その色彩と構図に魅せられた。

邦題:恋する惑星
原題:重慶森林
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
製作総指揮:チャン・イーチェン
出演者:
 トニー・レオン(警官663号)
 フェイ・ウォン(フェイ)
 ブリジット・リン(謎の金髪女)
 金城武(警官223号)
音楽:フランキー・チェン
撮影:クリストファー・ドイル、アンドリュー・ラウ
編集:ウィリアム・チャン
製作会社:ジェットトーン(澤東)
配給:プレノンアッシュ
公開:1995年7月15日(日本)
上映時間:100分
製作国:香港
言語:広東語
2部構成の映画。
前半はブリジット・リン(謎の金髪女、麻薬密輸犯)と金城武(警官223号)の絡み。
後半は、フェイ・ウォン(フェイ)とトニー・レオン(警官663号)の絡み。
どちらも香港が舞台だ。
雑多でゴチャゴチャして活気がある香港。
香港に行ったことがないが行きたくなった。
後半、劇中の挿入歌、ママス&パパスの『夢のカリフォルニア』が耳にタコである(笑)
フェイ・ウォンがヘビーローテーションで流しまくっていたからだ。
あと、ダイナ・ワシントンの『What A Differnce A Day Makes』もよく流れた。
この曲は、エスター・フィリップスが歌った方が好きなんだがな、と思いながら観ていた。
大好きな曲だ。
邦題:天使の涙
原題:墮落天使
英題:Fallen Angels
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
製作総指揮:ウォン・カーウァイ
出演者:
 レオン・ライ(殺し屋)
 ミシェール・リー(エージェント)
 金城武(モウ)
 チャーリー・ヤン(失恋娘)
 カレン・モク(金髪の女)
音楽:フランキー・チャン、ロエル・A・ガルシア
撮影:クリストファー・ドイル
編集:ウィリアム・チョン、ウォン・ミンラム
配給:プレノンアッシュ
公開:1996年6月29日(日本)
上映時間:96分
製作国:香港
言語:広東語
殺し屋(レオン・ライ)とそのパートナーである美貌のエージェント(ミシェル・リー)。
仕事に私情を持ち込まないのが彼らの流儀。
二人はほとんど会うことはない。
エージェントが根城とする重慶マンションの管理人の息子モウ(金城武)は5歳の時、期限切れのパイン缶を食べすぎて以来、口がきけなくなった。
殺し屋はちょっとキレてる金髪の女(カレン・モク)と出会った。
エージェントは殺し屋に最後の仕事を依頼した。
殺し屋は最後の仕事に失敗し絶命した。
エージェントは街でモウに出会う。
彼のバイクに乗って家まで送ってもらう道すがら、彼女は人の温もりを感じた。


この映画は、ウォン・カーウァイは否定しているが「恋する惑星」に入れる予定だったものらしい。
映画の質感が「恋する惑星」によく似ている。
そして、カメラワークや色彩がタランティーノの映画に似ている。逆か?
タランティーノはウォン監督をリスペクトしているから。
邦題:花様年華
原題:花樣年華
英題:In the Mood for Love
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ウォン・カーウァイ
製作総指揮:チャン・イーチェン
出演者:
  トニー・レオン(チャウ)
  マギー・チャン(チャン夫人)
  レベッカ・パン(スエン夫人)
  ライ・チン(ホウ社長)
  スー・ピンラン(ピン)
音楽:マイケル・ガラッソ、梅林茂
撮影:クリストファー・ドイル、リー・ピンビン
編集:ウィリアム・チャン
衣装:ウィリアム・チャン
美術:ウィリアム・チャン
配給:松竹
公開:2001年3月31日(日本)
上映時間:98分
製作国:中国、フランス
言語:上海語、広東語
1960年代の香港が舞台。
お互いに伴侶をもつ男女がアパートに引っ越してきた。
お互いにそれぞれの伴侶が不倫をしていることを知る。
二人の距離はどんどんと縮まっていく。
しかし、一線は超えない。
男は、トニー・レオン(チャウ)
女は、マギー・チャン(チャン夫人)
お互いの伴侶は画面には登場しない。
チャン夫人の身体にフィットしたチャイナドレスに悶絶!
チャン夫人のチャイナドレスのヒップラインに欲情!
それでも一線は超えない。
最後の最後まで一線は超えない。
そして、あの結末は…
あれで二人は納得したのか…


今回観たウォン作品4本の中で一番良かった!
素晴らしい!!!
マギー・チャンの大人の色気にまいった!!
そして、ナット・キング・コールの挿入歌も絶唱!!
邦題:ブエノスアイレス
原題:春光乍洩
英題:Happy Together
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ウォン・カーウァイ
製作総指揮:チャン・イーチェン
出演者:
  レスリー・チャン
  トニー・レオン
  チャン・チェン
音楽:ダニー・チョン
撮影:クリストファー・ドイル
編集:ウィリアム・チョン
衣装:菊池武夫
美術:ウィリアム・チョン
配給:プレノンアッシュ
公開:1997年9月28日(日本)
上映時間:96分
製作国:香港
言語:広東語、北京語、スペイン語
この映画は公開当時、観ている。
ウォン監督がホモ達の切ない愛、刹那的な愛、破滅的な愛を描いた恋愛ドラマだ。
レスリー・チャンとトニー・レオンの全裸の濡れ場?も話題になった映画だ。



当時、ワタシの会社は新宿御苑前にあった。
度々、二丁目のスナックに飲みに行った。
薄暗い路地やビルの階段で、熱い抱擁を交わしているホモ達を何度も目撃した。
近くの二丁目公園はホモ達のハッテン場になっている。
夏場、ホモ達は全裸に近いマッチョな姿で相手を探していた。
ワタシはノン気だ。
男の尻より女の尻を追いかけていた(笑)



この映画の冒頭シーン。
イグアスの滝のバックで挿入された歌が、カエターノ・ヴェローゾの「ククルクク・パロマ」だったことを知った。
公開当時は知らなかった。
(2018/3/14)
 

【映画 No.059】

週プレ劇場@週プレ酒場

 先日(3/15)、話題の映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」オリジナル・サウンドトラック発売記念のイベントに行ってきました。監督の冨永昌敬さん、原作の末井昭さん、爆発したお母さん役の尾野真千子さん、そして、音楽とアラーキー役で出演している菊地成孔さんによるトーク・イベントでした。
菊地さん「出演したことを今でも後悔している」、冨永監督「菊地さんが出たそうにしていたから」、二人の見解は正反対です(笑) 
サントラでは尾野さんと末井さんがデュエットしています。「山の音」(作詞/作曲:菊地成孔)という曲です。菊地さんの出演については映画音楽史上前例のない原作者と主演女優がデュエットすることが条件だったそうです。
尾野さんの歌については「ほぼほぼ無修正」だったそうですが、末井さんの歌については「最先端のコンピューター技術を駆使した大手術」だったそうです。
発売されたばかりのCDに冨永監督、末井さん、菊地さん、そして、オーケストレーションを担当した小田朋美さんのサインをいただきました。

(2018/3/17)
 

【映画 No.060】

昨年の20世紀FOX2本@新文芸坐

邦題:ドリーム
原題:Hidden Figures
監督:セオドア・メルフィ
脚本:アリソン・シュローダー、
   セオドア・メルフィ
原作:マーゴット・リー・シェッタリー
   『Hidden Figures』
製作:ドナ・ジグリオッティ
製作総指揮:ジャマル・ダニエル
出演者:タラジ・P・ヘンソン
    オクタヴィア・スペンサー
    ジャネール・モネイ
    ケヴィン・コスナー
    キルスティン・ダンスト
    ジム・パーソンズ
音楽:ハンス・ジマー
   ファレル・ウィリアムス
   ベンジャミン・ウォルフィッシュ
撮影:マンディ・ウォーカー
編集:ピーター・テッシュナー
製作会社:フォックス2000・ピクチャーズ
   チャーニン・エンターテインメント
   レヴァンティン・フィルムズ
配給:20世紀フォックス
公開:2017年9月29日(日本)
上映時間:127分
製作国:アメリカ
言語:英語
邦題:オリエント急行殺人事件
原題:Murder on the Orient Express
監督:ケネス・ブラナー
脚本:マイケル・グリーン
原作:アガサ・クリスティ
 『オリエント急行の殺人』
製作:リドリー・スコット
   マーク・ゴードン 他
出演者:ケネス・ブラナー
    ペネロペ・クルス
    ウィレム・デフォー
    ジュディ・デンチ
    ジョニー・デップ
    ジョシュ・ギャッド
    デレク・ジャコビ
    ミシェル・ファイファー
    デイジー・リドリー
音楽:パトリック・ドイル
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
編集:ミック・オーズリー
製作会社:キングバーグ・ジャンル
    ザ・マーク・ゴードン・カンパニー
配給:20世紀フォックス
公開:2017年12月8日(日本)
上映時間:114分
製作国:アメリカ
言語:英語
面白い映画だった。
爽快な気分になった。
痛快なラストシーンにワクワクした。

しかし、邦題の「ドリーム」は気に入らない。
原題「Hidden Figures」。
直訳すれば「隠された人々」。
そのままでいいじゃないかと思う。
何だ素っ気ない「ドリーム」ってのは(笑)

≪1962年に米国人として初めて地球周回軌道を飛行した宇宙飛行士ジョン・グレンの功績を影で支えた、NASAの3人の黒人系女性スタッフの知られざる物語を描いたドラマ≫

史実とは少し違う設定だが、概ね合っているようだ。
彼女たちは黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされていた。
例えば、主人公キャサリンは800mも離れた別の建物にある黒人用にトイレに行く。
コーヒーポットも白人とは別のものだった。

理解のある上司役ケビン・コスナーが良かった。
「仕事ができるなら白も黒も男も女も関係ない!」というタイプの上司である。
大物俳優だが、この映画ではサラっとしたさり気ない演技がカッコいい!!

1974年(シドニー・ルメット監督作)のリメイク。
ミステリーの結末が分かっていたので興味半分で観た。

≪1974年にも映画化されたアガサ・クリスティの名作ミステリーをケネス・ブラナーの製作・監督・主演、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーら豪華キャストの共演で新たに映画化≫

ハッキリ言って、この映画は製作/監督/主演ケネス・ブラナーの自己満足。
ラストシーンの演出がクサい。
雪山で脱線した列車を降り、トンネルの入り口付近で、名探偵ポアロが13人の容疑者を全員「最後の晩餐」のようにテーブルの前に横並びにさせ、過去に起きた誘拐殺人との関連性から事件の真相を明らかにしていく…

状況からして、あまりにも不自然。
「事件の真実」と「最後の晩餐」(イエス・キリストが十字架に磔にされる前、十二弟子と共に取った最後の食事のこと)を関連付けようとしたに違いない! でも、ちょっとウザい(笑)

しかし、役者としてのケネス・ブラナーは良かった。
74年版のポアロ役アルバート・フィニーよりは。

(2018/3/22)