映画 No.131 ~ No.140


【映画 No.131】

天気の子@MOVIX川口

【作品概要】
『言の葉の庭』、『君の名は』などで知られるアニメーション映画監督・新海誠の3年ぶりの長編最新作。
天候が狂い、雨が降り続く東京で「晴れ」をもたらす少女と家を出て行き場をなくした少年の出会いがやがて世界を変える出来事を起こす様子を描いているファンタジー映画。『君の名は』を始め、これまでの新海作品を手掛けてきたコミック・ウェーブ・フィルムがアニメーション制作を担当。そして、2000人を超えるオーディションから選ばれた醍醐虎汰朗、森七菜の新人に注目が集まるとともに、小栗旬や本田翼といった実力派俳優陣や人気声優、梶裕貴らが参加。豪華キャストで贈るアニメーション大作。



【超あらすじ】
① 異常気象で東京に雨が降り続いていた。
② 天野に不思議な力で100%晴れにする能力が宿る。
③ 森嶋と組んでお天気ビジネスを始め大成功する。
④ しかし、天野はその能力の代わりに人柱となり天界に召されてしまった。
⑤ 森嶋は、不思議な力で天界に行った天野を地上に連れ戻した。
  泣き所:「天気なんて狂ったままでいいんだ!」と叫び天野への恋心を打明ける。
⑥ 東京に再び雨が降り出し、3年後の東京は水没寸前となった。

【感想】
作画は素晴らしかった!ガラス窓を流れる雨水は、実写かと見間違えるほどだ。しかし、脚本は失敗だった。前作「君の名は。」もそうだったが、この監督の作品は、大切な設定を説明不足のままにするという欠点がある。主人公の森嶋が生まれ育った家庭環境や、なぜ家出したかという説明がないので、森嶋に「共感」とか「思いやる」ことができない。最後に森嶋が「天気なんて狂ったままでいいんだ!」と叫んでみても「そりゃ、マズいでしょ!」と反論したくなる。全く共感できないのである。15歳の天野が10歳の弟と二人暮らし出来ている状況も不自然である。そして、ラストで水没寸前の東京を見るのも辛くなる。せめて「天気の子」なんだからスカッと快晴で終わって欲しかった。


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/9/11)
 

【映画 No.132】

タロウのバカ@テアトル新宿

現在公開中の映画「タロウのバカ」を観に行こうと思っていた矢先、TBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」に大森監督がゲスト出演した。何というタイミングの良さだ! 久米さんは、大森監督の最近の2つの映画、樹木希林さんの演技が話題になった「日日是好日」と最新作の「タロウのバカ」を続けて観て「これ、本当に同じ監督?」と思ったそうだ。
と、いうことでテアトル新宿で「タロウのバカ」を観た。




2019年9月21日(土)TBSラジオ 久米宏ラジオなんですけど
久米宏/堀井美香 ゲスト:映画監督 大森立嗣



【作品概要】
大森立嗣監督が『ゲルマニウムの夜』より以前から温め続けてきた脚本をもとに作られた渾身作。音楽は「いだてん(東京オリムピック噺)」などを手掛ける大友良英。自由、絶望、青春、友情、焦燥、刹那、希望をテーマに人間模様が交錯する純粋かつ過激な問題作であり、社会孤立、ネグレクト、犯罪、セックス、ヤクザ、暴力に満ちた世界が衝撃的に描かれた作品となっている。

【感想】
 スゴイ映画だ!よくもまあこんな映画を撮ったものだ!!「構想20年」は大袈裟じゃない! 20年前にこの映画を撮りたいと言っても、誰にも相手にされなかっただろう。大森監督が20年間大切に温めたからこそ完成した映画だ。そして、主演のYOSHI君、最高だ!主演男優賞を贈りたい! ちょいと古いが、是枝監督の出世作「誰も知らない」で主演した柳楽優弥よりインパクトがある。天然は演技を越えるのだ!
 大友良英の音楽もいい! ジョン・フェイヒィやライ・クーダーを彷彿とさせる音響系ギターがタロウ・エージ・スギオの心象を表しているようだ。映画ファン必見だ!

 余談だが、育児放棄のタロウの母親を豊田エリーが演じている。私生活では柳楽優弥の嫁だが、「誰も知らない」で育児放棄された子供役の柳楽優弥の嫁が、育児放棄をする母親役を演ずるのは、何かの因果か?(笑)


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/9/24)
 

【映画 No.133】

宮本から君へ@イオンシネマ板橋

先週のTBSラジオ「伊集院光とらじおと」のゲストコーナーに、俳優の池松壮亮さんと女優の蒼井優さんがゲスト出演した。映画「宮本から君へ」のプロモーションだ。漫画「宮本から君へ」の実写映画化である。TVドラマ化もされているようだが、漫画もドラマもどちらも見ていない。蒼井さんは私生活では、あの赤メガネの山里亮太と結婚したばかりである。当然、そこは突っ込まれるところだ。伊集院「「池松くん、絶対今、あのメガネの男は君に嫉妬をしてると思うよ」「ハードなハードなラブシーンも当然あるでしょう? そういうのは旦那も見るの?」と突っ込まれていたが、蒼井「私はちょっと亮太くんには早いんじゃないかって話を…」・・・・・・山里亮太よ!綺麗な女優を嫁さんにしたのだから、スクリーンの中で嫁さんがエロい事をしていてもガマンだぜ(笑)

2019年9月25日(水)TBSラジオ 伊集院光とらじおと
伊集院光/安田美香 ゲスト:池松壮亮、蒼井優



【あらすじ】
大学を卒業して都内の文具メーカー・マルキタの営業マンになった宮本浩は、未熟で、営業スマイルひとつ出来ず、自分が社会で生きていく意味を思い悩んでいる。マルキタを辞めて独立した先輩・神保の知人である中野靖子と恋に落ち、靖子と腐れ縁にある風間裕二に向かって「この女は俺が守る」と宣言した宮本は、靖子と結ばれてやっと幸福な時間を手に入れることが出来るが、取引先の部長の息子で大学ラグビーの花形選手・真淵拓馬に靖子をレイプされてしまう。その時、泥酔して寝ていた宮本は、すぐそばで靖子がレイプされていたのに気付かず、靖子に絶縁される。怒った宮本は、力の差が歴然としている拓馬に復讐を誓うのだった。

【感想】
結構笑った!! 池松壮亮と蒼井優の高カロリー、高エネルギーの演技に圧倒された。池松壮亮としては、今までにない役だったのではないだろうか。「口角泡を飛ばす」という形容があるが、この映画の池松は前歯を折られて「口角ご飯粒を飛ばす」である(笑)
しかし、映画の流れは納得がいかない。時系列が滅茶苦茶じゃないのか。原作となる漫画を読んでないなので確証はないが、展開の不自然さが気になってモヤモヤが残ってしまった。それでも、池松壮亮と蒼井優の熱演と個性的な脇役らとの絡みが楽しめる映画だった。



★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/9/30)
 

【映画 No.134】

ジョーカー@MOVIX川口

【作品概要】
 2019年アメリカ映画。『バットマン』の悪役として有名なジョーカーの誕生物語。大都会ゴッサム・シティで道化師として暮らしていた一人の孤独な男アーサー・フレック。ピエロメイクの大道芸人として、病弱な母を支える心優しい面もあり、同じアパートに住むソフィーに好意を抱いている。どんな時も笑顔で人々を楽しませなさいと言う母の言葉通り、コメディアンを目指してドン底から抜け出そうとするアーサーが、なぜ巨大な悪のカリスマ『ジョーカー』へと変貌したのか。切なくも衝撃的真実の物語。「ジョーカー」はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得。8歳で俳優デビューを飾ったホアキン・フェニックスは本作で「キャリア史上最高の演技」と称賛された。 監督:トッド・フィリップス

【感想】
 とにかく主演のホアキン・フェニックスが素晴らしかった!! 最初から最後までその演技から目が離せなかった。もしも松田優作が生きていたらやらせたい(やりたいと思う)超独創的な役柄だと、妄想しながら観ていた。ネタバレになるが、ジョーカーとバットマンは異母兄弟だった! 映画でははっきり明言していないが1カットでそれがはっきり見えた。痴呆症の母親が所持していた昔の写真の裏にTW(トーマス・ウェイン )の署名があった。母親とトーマスが一緒に写っている写真だ。これだけで「異母兄弟説」の裏付けには十分ではないか。謎解きはともかく、この映画は、今年観た映画の中でも最高の作品だった。
 おっと、忘れてはいけない。 この映画、音楽も最高だった! アーサーの心象が表れた見事な選曲だった! クリームとかフランク・シナトラとか。


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/10/29)
 

【映画 No.135】

緋牡丹博徒@新文芸坐

久しぶりに池袋・新文芸坐に行ってきた。館内に喫煙所が無くなって2本立て映画を観るのが億劫になっていた。1本目を観て2本目を観る前に吸うタバコは格別に旨かったのだ。嫌煙者には理解できないであろう愛煙家の愉しみだったのだ。
 それでも新文芸坐に行ったのは東映任侠映画の巨匠・加藤泰監督の特集をやっていたからだ。「緋牡丹博徒 花札勝負」と「緋牡丹博徒 お竜参上」の2本立てを観た。緋牡丹博徒シリーズは全8作。加藤監督が手掛けたのは3作品だ。前述の2作品と「緋牡丹博徒 お命戴きます」である。緋牡丹博徒シリーズの中でも最高傑作「花札勝負」と次席「お竜参上」である。とにかく懐かしい。10代の頃、田舎の映画館で観た作品であり、上京して新文芸坐の前身、文芸坐地下のオールナイトで何度も観た作品なのだ。映画はいい。憧れだった藤純子さんや高倉健さんや菅原文太さんはスクリーンの中では若いままだ。
 藤純子さんが演じるのは熊本の矢野組二代目組長・矢野竜子。通称、緋牡丹のお竜。お竜さんと高倉健さん、お竜さんと菅原文太さん、1対1で合う場面、逢瀬でも忍び合いでもないし色っぽい演技は何一つないが、これは見事なラブシーンだと思う。

 NHK大河ドラマ「いだてん」第一部で主人公、日本のマラソンの父・金栗四三が熊本弁で「とつけむにゃ」(とんでもない)を連発していたが、熊本のお竜さんも1回だけ「とつけむにゃ」と言っていた。新しい発見だった(笑)

 

余談だが、2本立て映画館、高田馬場の早稲田松竹も設置していた灰皿が撤去されている。1本目と2本目の合間で吸うタバコの旨さは絶滅したのだろうか。愛煙家は益々追い詰められている。 by 最後の喫煙者

(2019/12/3)
 

【映画 No.136】

さよなら くちびる@早稲田松竹

久しぶりに早稲田松竹に行ってきた。今年公開された「さよなら くちびる」と「愛がなんだ」の邦画2本立てだ。

【あらすじ】
 インディーズで注目を浴びた女性ギター・デュオ「ハルレオ」は、それぞれの道を歩むため解散を決めた。彼女たちはローディ兼マネージャーのシマを伴って、全国7都市を巡るさよならツアーに出発する。レオはシマ、シマはハルに思いを寄せており、ハルもレオに特別な感情を抱いていた。
 全国ツアーの道中、歌詞にしか書けないハルの真実と、歌声でしか出せないレオの想い、 隠し続けたシマの本音が少しずつ明らかになり、すれ違う思いをぶつけ合って生まれた曲「さよならくちびる」は、3人の世界をつき動かしていく――。

【感想】
 「解散する」で映画が始まった。しかし、解散理由があまりはっきりしない。この段階で、多分解散しないんだろうな、と何となく想像できた。全国7箇所を巡るツアー。ロードムービーだ。ツアーの途中で「解散」がバレてしまい「解散ツアー」になってお客さんが増えた。
 ハルは「レズ」でレオのことが好きなのだが、レオはヤバい男ばかりに気が向く「ビッチ」だ。そして、多分「バイ」なのだろう。結局、最後は解散したのかもしれないが、シマを含めて三人が別れることはなく、そこで映画は終わった。モヤモヤ感はあるが、別れなかったのは良かった。しばらく休んで「再結成」したらいい(笑)
 そんなことはともかく、やたらとタバコを吸うシーンの多い映画だ。若い女性がひっきりなしにタバコを吸っている。不満感やイライラ感や緊張感や不安感とかを表現する小道具としてタバコが使われているのかもしれないが、あまり関心しない。愛煙家のわたしが言うのもなんですが(笑)


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/12/9)
 

【映画 No.137】

愛がなんだ@早稲田松竹

久しぶりに早稲田松竹に行ってきた。今年公開された「さよなら くちびる」と「愛がなんだ」の邦画2本立てだ。

【あらすじ】
 28 歳のテルコはマモル(マモちゃん)に一目惚れした5ヶ月前から、生活はすべてマモちゃんを中心に動いている。仕事中でも、真夜中でも、マモちゃんからの電話が常に最優先。仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモちゃんがいてくれるならテルコはこの上なく幸せなのだ。けれど、マモちゃんにとっては、テルコはただ都合のいい女でしかなかった。マモちゃんは、さっきまで機嫌良く笑っていたのに、ちょっと踏み込もうとすると、突然拒絶する。今の関係を保つことに必死なテルコは自分からは一切連絡をしないし、決して「好き」とは伝えられない。
 ある日、朝方まで飲んでマモちゃん家にお泊まりしたことから、2人は急接近。恋人に昇格できる!と有頂天になったテルコは、頼まれてもいないのに家事やお世話に勤しみ、その結果、マモちゃんからの連絡が突然途絶えてしまう…。
それから3ヶ月が経ったころ、マモちゃんからひょっこり電話がかかってくる。会いにいくと、マモちゃんの隣には年上の女性、すみれさんがいた…。

【感想】
 これほど登場人物に共感・好感しない映画も珍しい(笑) 登場人物の誰もが「自分のことが好き」なのだ。かたくなに自分のスタンスを固辞する人々だ。他人への優しさではなく「自分は優しい人間だ」を演じているだけなのだ。この設定は、ある意味面白い。岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、江口のりこなどの個性派・実力派が上手いことやっている。
 原作が面白いのだろう。映画より原作を読んだ方が面白いかも。ただ、好きな登場人物が一人も出てこないので読まないだろう(笑)
 岸井ゆきのは美人か?ブスか? 彼女を初めて見たのはNHKの朝の連続ドラマ「まんぷく」に出演していたときだった。かわいいけれどブスだなーーと思ったのが第一印象だった(笑)


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2019/12/9)
 

【映画 No.138】

侍の名のもとに ~野球日本代表 侍ジャパンの800日~

少し前になるが、侍JAPANのドキュメンタリー映画「侍の名のもとに ~野球日本代表 侍ジャパンの800日~」を観た。2週間限定の上映だった。
稲葉監督就任からWBSCプレミア12優勝までの軌跡のドキュメンタリー映画。プロ野球ファン必見である。

【感想】
冒頭シーンはWBSCプレミア12の決勝戦で、横浜DeNAの山崎投手の「泰晃ジャンプ」の大合唱からの優勝決定シーン(2019年11月17日)でスタートした。
そして、一転して、稲葉篤紀さんが侍JAPANの監督に就任(2017年7月31日)するところに遡る。ドキュメンタリー映画では常套の手法である。
 「直感力」を稲葉監督は大事にしているそうだ。「勝つためにやれることは何でもやる」という稲葉監督の覚悟。各球団のキャンプを回り監督や選手らとコミュニケーションを取っていた。代表選手28名を選考する首脳会議にまでカメラが入っている。腕組みをして苦悩する首脳陣。その苦悩が伝わってきた。
 稲葉監督は一芸に秀でた「スペシャリスト」の重要性を説いていた。その代表が(我等が)福岡ソフトバンク・ホークスの足のスペシャリスト・周東選手である。思わず「よっ!待ってました!」と声を掛けたい気分になった。
「良いチームを作るにはムードメーカーが必要」と稲葉監督。(我等が)福岡ソフトバンク・ホークスの松田選手(マッチ)に代表選出の打診をした。このシーンもカメラで捕らえれていた。「守備固めでも、何でもやります!」とマッチが意欲を示した。
日本代表にキャプテンはいなかったが、実質的には西武の秋山選手がその役割になっていた。しかし、練習試合でのデッドボールによる骨折で代表から離脱してしまう。
 広島の鈴木誠也選手のシーンでは、日本代表の4番打者としての重責に悩むシーンが映し出されていた。2打席連続見逃し三振。バッティング練習でヤクルトの山田哲人選手のヘルメットを誤って被ったりした。相当プレッシャーになっていたのだろう。

 マッチは決勝戦の円陣ではネタを仕込んでいた。ベンチ裏の鏡の前で「必勝」と書かれたハチマキを巻いて、野球帽を被る。「36歳でも、こんなことするんやで」とまるでお笑い芸人の仕込みのようである。マッチは、ベンチ前の円陣で声出しのとき、野球帽を脱いで、指名した数人の選手にハチマキに書かれた文字を読ませた。「必勝」「必勝」「必勝」「必勝」最後に監督を指名し、稲葉監督が「必勝」と発声した。これによって一体感が最高潮に達した。
 決勝戦はヤクルトの山田選手の逆転ホームラン。楽天の浅村選手の貴重な中押しタイムリー、7回からは(我等が)福岡ソフトバンク・ホークスの甲斐野投手、オリックスの山本投手、そして最後は、守護神・山﨑投手による完璧な無失点の継投で、日本がプレミア12に初優勝し、10年振りに世界一に返り咲いたのである。

 全試合をリアルタイムで観戦していたので結果はわかっていたが、優勝シーンは何度見ても魂が震える。
ただ、この映画のマイナスは、ナレーションが若い女性の声だったことだ。例えばTBS「情熱大陸」やNHK「仕事の流儀」のようなシブい男性の声だったら良かったと思った。


★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★

(2020/2/21)