映画 No.111 ~ No.120


【映画 No.111】

寝ても覚めても@早稲田松竹 2019/4/29

【あらすじ】
 東京。亮平(東出昌大)は、コーヒーを届けに会社に来た朝子(唐田えりか)と出会う。真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながらも朝子は惹かれていきふたりは仲を深めていく。しかし、朝子には亮平には告げていない秘密があった。亮平は、かつて朝子が運命的な恋に落ちた恋人・麦(東出昌大)に顔がそっくりだったのだ――。

時系列的な簡単な補足
 ① 写真展で麦と朝子が出会い恋人同士になる。
 ② まもなくして麦が突然、朝子の前から失踪する。
 ③ 朝子と亮平が出会い一緒に暮らし始める。
 ④ 朝子の前に突然、麦が現れる。
 ⑤ 朝子は麦と手に手を取って逃避行。
 ⑥ 朝子は麦と別れ、亮平のもとへ帰る。
 ⑦ 朝子と亮平は、再び一緒に暮らし始める。

【感想】
 面白い映画でした! ムリ・ムダ・ムラが一切ないスッキリした編集。顔はそっくりだが性格・言動が違う亮平と麦、二役の東出の演技も良かった。演技していないような(地のままのような)透明な美しさの唐田えりかも良かった。顔がそっくりだと好きになるか?というファンタジックなテーマですが …… 好きになるに決まっています!(笑) 朝子の軽率と思える行動を支持します。朝子は猫のような人間だもの(笑) ※飼い猫が出てくる
 ラストシーンで亮平が「俺はお前のこと、きっと一生信じへんで」と言い、朝子は「うん」と答えます。さらに、二人で暮らす新居の窓から川を見ながら亮平が「水かさが増してる。きったない川やな」と言い、「うん。…でも綺麗」と朝子が答えます……二人の会話が全然かみ合っていない(笑) この先この二人が「末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし。」とはならないと思いました。またいつの日か朝子の前に麦が現れて……

(2019/5/3)
 

【映画 No.112】

アラン・ロブ=グリエ特集@早稲田松竹

昨年11月から全国で公開されている「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ(回顧展)」だが、早稲田松竹での上映が関東で観ることができるラスト・チャンスということで行ってきた。これを見逃がしたら二度と見られないかも、という強迫観念があった。10連休の後半3日間で6作品を観た。観に行って良かった! 至福の3日間だった!

今回上映された6作品[製作年順]
1963年 不滅の女(L’IMMORTELLE)③
1966年 ヨーロッパ横断特急(TRANS-EUROP-EXPRESS)④
1968年 嘘をつく男(L’HOMME QUI MENT)⑥
1970年 エデン、その後(L'EDEN ET APRES)①
1974年 快楽の漸進的横滑り(GLISSEMENTS PROGRESSIFS DU PLAISIR)②
1983年 囚われの美女(LA BELLE CAPTIVE)⑤

 1983年の「囚われの美女」以外は日本初公開である。早稲田松竹の上映スケジュールだから仕方ないが、自分は①~⑥の順番で観た。しかし、理想的には製作年順に観たかった。
 もしも、製作当時に日本で公開されていたら……今の日本映画はどうなっていただろう、と考えさせるほど影響力を持った作品である。案外、鈴木清順や大島渚は「快楽の漸進的横滑り」などをフランスで観ていたりして(笑)

(2019/5/7)
 

【映画 No.113】

エデン、その後@早稲田松竹 2019/5/4

【概説】
「ヌーヴォー・ロマン」の旗手アラン・ロブ=グリエの監督第4作。カフェ・エデンにたむろするパリの大学生たち。退廃的な遊戯や儀式に興ずる彼らの前に、謎の男が姿を現す。男が差し出した麻薬らしき粉末を摂取したバイオレットは、死や性愛をめぐる様々な幻覚に襲われる。ロブ=グリエ監督にとって初のカラー作品で、めくるめくエロティックな幻想を極彩色の映像で表現した。バイオレット役は「あの胸にもう一度」のカトリーヌ・ジュールダン。

【感想】
初めて観たロブ=グリエ作品で、いきなり、その演出・美術・撮影・編集・音響に度肝を抜かれた。スゴイ! ピエト・モンドリアンの抽象絵画を模したような鏡とカラフルなガラス張りのカフェで繰り広げられる倦怠的な若者達の心理を表現したような倒錯行動。この時点で、ストーリーを追うことをあきらめた。もはや筋道を立てて説明することができない。チュニジアの白い壁と青い海と女体から流れる赤い血、砂浜で解体されたマネキン、サルバドール・ダリの抽象絵画の舞台となりそうな砂のある風景だ。チュニジアの民族音楽をバックに踊るカトリーヌ・ジュールダンの腰の動きに萌えた! ロブ=グリエは即興的に演出し、即興的に撮影し、即興的に編集したのだろう。一つ一つのカットを額に入れて飾って置きたいほど美しい。

(2019/5/8)
 

【映画 No.114】

快楽の漸進的横滑り@早稲田松竹 2019/5/4

【概説】
第2次大戦後のフランスで生まれた文学界の潮流「ヌーヴォー・ロマン」の代表的作家として知られるアラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、そのセンセーショナルな内容からヨーロッパ各地で上映禁止となった問題作。
ルームメイト殺害の容疑で逮捕された美女アリス。心臓にハサミが突き刺さった被害者の体には、描きかけの聖女の殉教の絵が残されており……。出演は「フレンズ ポールとミシェル」のアニセー・アルビナ、「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「007 ムーンレイカー」のマイケル・ロンズデール、「ピアニスト」のイザベル・ユペール。

【感想】
画家のアリスはノラを裸にしてベッドに手首を縛りボディ・ペインティングしていた。アリスはカメラ目線で大きな叫び声を上げた。(一瞬暗転)ノラがベッドに手首を縛られたまま胸をハサミで刺されて死んでいた。アリスは犯人を見て叫び声を上げたと考えられるが、刑事はアリスを容疑者として取り調べる。この刑事は死体のある室内を2周して、ようやくノラの死体に気付くのである。なななんだ?この演出は?(笑) アリスは犯人の顔を見ているはずなのに説明しない。なななんなんだ?このストーリーは? (笑) そこに、ノラにそっくりの女弁護士が現れ容疑者の生い立ちを聞く。ノラの人生と女弁護士の人生が重なり合い、ノラが生き返ったように展開する。終盤、アリスと女弁護士(生き返ったノラ)で現場の再現をはじめるが、女弁護士に割れたガラスの瓶が刺さり出血多量で死んでしまう。そこに刑事が現れ、再び死体のある室内を2周して、ノラの死体に気付き「最初からやり直しだ」と吐き捨てるのだった。…… 笑った。また最初から始めるのか?…… 脚本は難解だが、この映画も、女優・美術・撮影・編集・音響が素晴らしかった。
斬進とは「順を追ってだんだんに進むこと」「少しずつ進歩すること」とすれば、『快楽の漸進的横滑り』は、SMの快楽を求めて進んで行けば殺人遊戯に到達する(横滑りする)、ということなのかも…

(2019/5/9)
 

【映画 No.115】

不滅の女@早稲田松竹 2019/5/5

【概説】
20世紀の文学界を揺るがした革命的ムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」の代表的作家アラン・ロブ=グリエが1963年に発表した映画監督デビュー作。休暇を過ごすためイスタンブールにやって来た教師の男は、陽気だがどこか謎めいた美女と出会う。男は彼女との邂逅を重ねるうち、その不可解さに妄執をかき立てられていき……。従来の劇映画の概念を大きく逸脱した過激な語り口が賛否両論を呼び、ルイ・デリュック賞を受賞した。

【感想】
「不滅の女」というタイトルはいささか大仰らしく「死なない女」という意味のようだ。「不滅の女」より「死なない女」の方がこの映画のタイトルにふさわしい。イスタンブールで出会った謎めいた美女は事故で死んでしまった…しかし、その美女が再び現れる。死ななかったのか?それとも幽霊なのか?それとも男の妄想なのか? 今、スクリーンに映っているのは現実か夢幻かわからなくなってしまう。もはやストーリーを追うことはあきらめた。またしてもロブ=グリエの術にはまってしまった。何か重要なことを見逃してしまったのか不安にかられる映画だ(笑) モノクロだが、女優は美しく、一つ一つのカットと音響が刺激的だ。トルコで撮影されたようだ。遺跡となっている寺院での場面はカラーだったら良かったのに…

(2019/5/10)
 

【映画 No.116】

ヨーロッパ横断特急@早稲田松竹 2019/5/5

【概説】
20世紀の文学界に革命を起こしたムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家アラン・ロブ=グリエの映画監督第2作。パリからアントワープへ麻薬を運ぶ男が繰り広げる波乱万丈な道中を、幾重にも重なったメタフィクションで構築。スリラーの枠組みを借りてシリアスとコミカル、嘘と真実、合理と非合理の境界を軽やかに行き来する。公開時は「ヨーロピアン・アバンギャルドの最重要作品」と評され、ヒットを記録した。出演は「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「アントワーヌとコレット 二十歳の恋」のマリー=フランス・ピジェ。映画監督役でロブ=グリエ自身も出演。

【感想】
この映画は「映画の中の映画とその中の映画で構成された映画」である。(笑)
一つ目の映画は、我々が劇場でいま観ている「ヨーロッパ横断特急」という「映画A」。二つ目は、ロブ=グリエ自身がジャンという映画監督役で登場し、国際列車「ヨーロッパ横断特急」に乗り込み、ロブ=グリエの妻カトリーヌ演じるリュセットや助手と映画の構想を練るという「映画B」。三つ目が「映画B」の元になっている特急列車に乗り込んでいる乗客や駅の売店などを映した「映画C」。そして、四つ目が、その映画の構想を映像化した「映画D」である。その四つの映画が、何の注釈もなく入れ替わる。我々は「映画A」を観ているが、その時々で「映画B」か「映画C」か「映画D」を判断する必要がある。「パリからアントワープへ麻薬を運ぶ男が繰り広げる波乱万丈な道中記」は「映画D」であるが、「映画B」や「映画C」が出たり入ったりしてくるのでややこしい。そして、エンディングは「映画C」である。ロブ=グリエのトリックに騙されないように注意だ(笑)

(2019/5/11)
 

【映画 No.117】

囚われの美女@早稲田松竹 2019/5/6

【概説】
フランスで第2次大戦後に巻き起こった文学界のムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」の旗手といわれる作家アラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、シュルレアリスム画家ルネ・マグリットの多数の絵画をモチーフに描いた不条理サスペンス。デューク・エリントンのジャズナンバーが流れる場末のナイトクラブ。なまめかしく踊るブロンド美女を、黒いスーツ姿の男が見つめている。その男バルテルは、地下組織で情報の運び屋をしている。バルテルが目を離した隙に、女は姿を消してしまい……。

【感想】
ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』やジャン・コクトー『美女と野獣』で知られる撮影監督アンリ・アルカンによる幻想的な映像。霞がかかったような映像は、仮想世界と現実世界の境界線だったのか。この映画は≪美しき女吸血鬼≫の物語。
運び屋に仕事を指示するハーレー・ダビットソンに乗る女の背景ははめ込み合成だ。結構長い時間映されている。何ともチープというかダサい(笑) 当然これは意図的なもので、ロブ=グリエの「遊び」だろう。もしくは、過激派動物愛護運動家ブリジット・バルドーへの「何らかのアンチ・メッセージ」と見るのは考え過ぎだろうか。(セルジュ・ゲンスブールの「ハーレー・ダビットソン」という曲をブリジット・バルドーが歌っていた、という単純な連想。「肉を食うな!」と主張したバルドーへの反抗)

(2019/5/11)
 

【映画 No.118】

嘘をつく男@早稲田松竹 2019/5/6

【概説】
20世紀の文学界に起こったムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家アラン・ロブ=グリエの映画監督第3作で、ボルヘスの短編「裏切り者と英雄のテーマ」を下敷きに描いたドラマ。第2次世界大戦末期、ナチス傀儡政権下のスロバキア共和国。小さな村に、レジスタンスの英雄ジャンの親友だという男が現れて彼の妻や妹を誘惑しはじめ……。「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャンが主演を務め、第18回ベルリン国際映画祭で男優賞を受賞。

【感想】
大勢のドイツ軍兵士に追われている男。兵士ではない。丸腰でジャケットを着てネクタイをしている。この設定に違和感がある。兵士達と男が同じフレームに収まることはない。これもおかしい。「追う側」と「追われる側」のまったく関係ない映像を編集したように見える。男は撃たれて倒れる。しかし、しばらくして、無傷でむっくりと起き上がり歩き始める。なななんなんだ?! ゾンビ映画か(笑)
「ジャン・ロバン」と名乗る男は「ボリス」または「ウクライナ人」とも名乗っている。本当の名は「ボリス」のようだ。とにかく発言が矛盾だらけの「嘘をつく男」である。「ジャン」とはレジスタンスの「英雄」らしい。本物の「ジャン」の妻を誘惑するボリス、その妹を誘惑するボリス、その家の女中を誘惑するボリス。嘘に嘘を重ねて衝撃的な謎の顛末を迎える。主演のジャン=ルイ・トランティニャンが素晴らしい。

(2019/5/11)
 

【映画 No.119】

ビル・エヴァンス タイム・リメンバード
@アップリンク渋谷 2019/5/11

【概説】
アメリカのジャズ・ピアニスト、ビル・エバンスの生涯を追ったドキュメンタリー。数々の名演、名盤を残し、薬物依存により51歳の若さで生涯を閉じたビル・エバンス。1958年にマイルス・デイヴィスのバンドに加入し「カインド・オブ・ブルー」を制作した当時の様子や、ドラマーのポール・モチアンとベーシストのスコット・ラファロをメンバーに迎えた歴史的名盤「ワルツ・フォー・デビイ」の制作経緯、そして肉親たちから見たエバンスの素顔や、エバンス自身の音楽への思いなど、これまで未公開だった数々の証言、エバンスの演奏シーンなど貴重なアーカイブで構成。また、ジャック・ディジョネット、ジョン・ヘンドリックス、トニー・ベネットら同時代に活躍したジャズマンや、本編の制作中に亡くなったポール・モチアン、ジム・ホール、ボブ・ブルックマイヤー、ビリー・テイラーらも登場。エバンスが駆け抜けた51年をさまざまな角度から読み解いていく。

【感想】
 様々なビル・エヴァンスに関する文献を読んでいたので、特段新たな発見はなかった。文字として得ていた知識を映像で確認できたことは良かった。「カインド・オブ・ブルー」の制作の様子、名盤「ワルツ・フォー・デビイ」の制作経緯、スコット・ラファロの交通事故死、恋人エレインの自殺、兄ハリー・エヴァンスの自殺、若いネネットとの結婚、息子エヴァンの誕生、そして、ヘロインやコカインによる「時間をかけた自殺」……
 しかし、ビル・エヴァンスの演奏スタイル(個性)に影響を与えたジョージ・ラッセルとの関わりについてはほとんど触れられていない。90分シバリがあったのか、とにかく上映時間84分の中に何でもかんでも詰め込んでいる。インタビューも音楽もパッチワークのようだ。落ち着きがない。インタビューは、どれもこれも顔のアップ!ばかりで引いてしまった(笑) 1曲だけでもいいので、ラファロとモチアンとのトリオでフル尺の演奏が聴きたかった。
「時間をかけた自殺」は珍しくない(笑) ジャズ・ミュージシャンにはよくある通り道だ。白人だけでもチェット・ベイカー、アート・ペッパー、スタン・ゲッツなどの名がすぐに浮かぶ。
 1958年、全員黒人のマイルス・デイヴィスのバンド。白人のビル・エヴァンスに声を掛けたマイルスはエライ! そして、マイルスのバンドに飛び込んでいったビル・エヴァンスはもっとエライ!! キング牧師が「I Have a Dream」と言う前なのだ。


 余談だが、ビル・エヴァンスは4度来日している。初来日は1973年で「ライヴ・イン・トーキョー」というアルバムが遺されている。幸運にもわたしは、1974年の2度目の来日の時に、ビル・エヴァンス・トリオ(エディ・ゴメス(b) マーティ・モレル(ds))の生演奏を聴くことができた。会場は新潟県民会館大ホールだった。その時のステージの光景と、コンサート・ホールの独特な「いい匂い」が脳裏に焼き付いている。ちなみに、この時の来日ではエレインさんも同行していたが、帰国後まもなく自殺してしまった。
そして、ビル・エヴァンスが亡くなったのは5度目の来日を目前にした1980年9月15日であった。(9月20日から東京を皮切りに大阪・福岡・名古屋・秋田などでコンサートが予定されていた。)

(2019/5/13)
 

【映画 No.120】

バスキア、10代最後のとき@早稲田松竹 2019/5/18

【概説】
 画家ジャン=ミシェル・バスキア没後30年を記念して制作されたドキュメンタリー。まだ名声を得る前の1970~80年代のNYの社会やムーブメントに焦点を当て、初期の作品や影響を受けた詩や音楽を交えながら、アーティストとして活躍していく姿に迫る。監督は、「豚が飛ぶとき」のサラ・ドライバー。出演は、ミュージシャンのファブ・5・フレディ、グラフィティ・アーティストのリー・キュノネス、映画監督のジム・ジャームッシュ、ファッション・デザイナーのパトリシア・フィールドら。
 1978年、ニューヨーク。イースト・ビレッジで路上生活をしながら、友人の家のソファで寝ていた18歳のジャン=ミシェル・バスキア。後に新時代を代表するアーティストとなり、27歳でこの世を去った画家だ。破綻し暴力に溢れた1970~80年代のニューヨークのムーブメント、政治、人種問題、ヒップホップ、パンクロック、ファッション、文学、アート・シーン……それらすべてが彼の心を動かし、彼をアーティストとして育てていった。名声を得る前のバスキアの生活や、ニューヨークとその時代を追い、どのように天才アーティストが生まれたか、その真実に迫る

【感想】
 2年ほど前に、バスキアの作品を123億円で落札し「良いお客さん」となった日本人がいるが(笑)そのバスキアの10代の頃にスポットを当てたドキュメンタリー映画。ジャクソン・ポロック、アンディ・ウォーホル、デイヴィッド・ホックニー、ジャスパー・ジョーンズ、そして、ジャン=ミシェル・バスキア。みんな大好きな現代アートのアーティストだ。この映画に描かれているのは1970~80年代の荒廃したニューヨークのストリート文化だ。「どのように天才アーティストが生まれたか、その真実に迫る」という売り文句はいくらなんでも大袈裟だろう。ストリートの中から産まれたヒップホップ、パンクロック、パンク・ファッション、ロフト・ジャズ、ポップ・アート・・・その中のひとつのアイコンとして「バスキア」が描かれているに過ぎない。バスキア自身の発言はほとんど出てこない。友人・知人らがバスキアの思い出を語る旧態依然の「型にはまった」スタイルのドキュメンタリー映画だ。対象がバスキアなのだから、もう少し破天荒なスタイルのドキュメンタリーを期待していたのだが・・・残念。
 昔、ジェフリー・ライト主演で「バスキア」という映画があった。デヴィッド・ボウイ、デニス・ホッパー、ゲイリー・オールドマンが共演していた。まだ、そちらの方が面白い。
 ちなみに、、2019年9月21日(土)~11月17日、六本木・森アーツセンターギャラリーで日本初のバスキア大回顧展の開催が決定したようだ。これは朗報だ。絶対に観に行く。

(2019/5/22)